こんにちは、SXSW Japanの宮川です。私はFuturist(未来予報™︎の専門家)として、未来を予報し、未来像を描くことを専門としています。SXSWについては13年間参加し続け、独自のレポートを毎年書いています。
今回は、SXSWに参加し、国際的な注目を集め、その後の成長につながった日本のスタートアップの成功例を紹介します。この記事を通じて、あなたも次のステップへと踏み出しましょう。
Director of SXSW Japan
Futurist / SXSW Official Speaker
宮川麻衣子
1. SXSWに参加した日本スタートアップ
SXSWに参加した日本のスタートアップの中には、国際的な注目を集め、その後の成長につながった成功例がいくつかあります。以下の表は、特に注目すべき日本のスタートアップとその成果をまとめたものです。
- AgIC株式会社 (現エレファンテック株式会社)(2014, 2015): 電気回路を紙に印刷する技術で注目を集め、約800万円をクラウドファンディングにより調達。2015年には総額1億円調達。その後も複数回の資金調達を行い、2024年3月時点で創業以来の累計資金調達額は約150億円(増資95億円、借入・補助金計54億円)となっている。
- 株式会社Moff(モフ)(2014, 2015): ウェアラブルデバイスで子供の遊びを拡張する製品を展示し、国際的に注目を集める。2024年9月、FANCLと共同で「自宅で手軽にオンライン運動プログラム」の提供を開始するなど、テクノロジーを活用した楽しく持続可能なヘルスケアサービスの開発・提供を通じて、人々の健康増進に貢献している。
- Skeletonics(2014): 2014年のSXSWで、Skeletonicsは人力で動く巨大な外骨格スーツを展示し、大きな注目を集めた。その後、技術開発を重ね、2024年現在では電動アシスト機能を搭載した新モデルを開発。エンターテインメント分野での活用に加え、産業用途への展開も進めている。2024年8月には、東京タワー内の常設アトラクション「RED°TOKYO TOWER」での稼働を開始し、一般の人々が体験できる機会を提供。さらに、「R-FIGHT」というスポーツエンターテインメントの事業化を進め、プロスポーツ化を目指している。Skeletonicsは、人間の動きを拡張する技術で、新しいエンターテインメントの形を創造し続けている。
- exiii(2015): 3Dプリンタで製作した義手で革新的なデザインと機能性を示し、メディアの注目を集める。現在は解散。
- 株式会社Xenoma (2016): スマート衣料技術「e-skin」を発表し、シリーズAで約4億円の資金調達に成功する。その後、技術開発を進め、2022年5月には3誘導のホルター心電計を用いた郵送検査サービスを開始。2024年現在、e-skinを活用したヘルスケアサービスを展開し、循環器疾患の予防や早期発見に貢献している。また、モーションキャプチャシステム「e-skin MEVA」も開発し、医療分野だけでなく、スポーツや産業分野にも技術を応用している。
- BionicM(2017) :2017年にロボット義足でSXSW Interactive Innovation Awardを受賞したBionicMは、その後も技術開発を進め、2024年5月に大きな進展を遂げた。同社が開発したパワード義足「Bio Leg」が、米国の審査機関PDACにより医療保険適用を承認され、特に注目すべきは、「モーターの力によって膝の曲げ伸ばしをアシストする機能」を持つ義足に認められるL5859コードの承認で、これは日本を含むアジアのメーカーが開発した義足として初めての事例。BionicMは2024年7月より米国で順次Bio Legの納品を開始し、グローバル展開を加速させる予定。
- Lunavity(2018): 2018年に設立されたLunavityは、ジャンプ力を高めるウェアラブルデバイス「LUNAVITY」で注目を集めた。その後、技術開発を進め、2022年には空中での姿勢制御が可能な「LUNAVITY 2.0」を発表。2024年現在、同社は宇宙空間での移動支援を目指す「LUNAVITY Space」プロジェクトを推進している。JAXAとの共同研究も進行中で、月面や火星での探査活動支援を視野に入れている。また、地上での応用として、建設現場や倉庫での作業支援、エンターテインメント分野への展開も検討中。
これらのスタートアップは、革新的な技術やアイデアをSXSWという国際的な舞台で発表することで、グローバルな注目を集め、その後の事業展開や資金調達につなげることに成功しています。特に、東京大学の「Todai To Texas」プログラムを通じて参加したチームが多く、大学発のイノベーションの重要性を示しています。また、過去にはJETROなどの支援を受けて参加した企業も多くいました。
2. Todai To Texas のSXSWでの活躍
Todai To Texas (TTT) プログラムは、東京大学関連のスタートアップや学生プロジェクトチームをSXSWに送り出し、世界的な舞台で革新的なアイデアや技術を披露する機会を提供しています。以下に、TTTを通じてSXSWに参加したチームの主な成果と活躍を年代順に紹介します。
2014年
- AgIC:紙に電気回路を印刷する技術を展示し、大きな注目を集めました。
- Moff:子供向けウェアラブルデバイスを発表し、国際的な関心を獲得しました。
2015年
- exiii:3Dプリンタで製作した革新的な義手「handiii」を展示し、メディアの注目を集めました。
- Phenox Lab:自律飛行可能なプログラマブルドローンを発表し、1位を獲得してSXSW出展権を得ました。
2016年
- Xenoma:スマート衣料技術を発表し、後にシリーズAで約4億円の資金調達に成功しました。
2017年
- BionicM:ロボット義足で学生イノベーション部門のSXSW Interactive Innovation Awards Student部門を受賞しました。日本の受賞は初!
2018年
- Lunavity:ジャンプ力を高めるウェアラブルデバイスで大きな話題を呼びました。
2019年
- Loraine、Mantra、LevioPole、jellysurf、GRA&GREEN、OUTSENSE、Eagle 3D Photonicsの7チームが参加し、多様な技術を披露しました。
2020年(キャンセル)
- Syrinx、Grubin、Wearbo、Roboxer、HARVESTX、GenKan by KOSKAの6チームが選出されましたが、COVID-19の影響でイベントは中止となりました。
2021年(オンライン開催)
- EVERSTEEL、Soseki by Studio Ousia、Wearbo、Wi-Monitor、sigboost、AI Painting Projectの6チームがオンラインで参加しました。
これらの参加チームは、SXSWという国際的な舞台で自らの技術やサービスを披露し、グローバルな視点からのフィードバックを得る貴重な機会を得ました。多くのチームがSXSW参加後に資金調達や事業拡大に成功しており、TTTプログラムがスタートアップの成長に大きく貢献していることがわかります。
TTTは、単なる展示会への参加支援にとどまらず、選考プロセスから現地でのサポートまで、包括的なプログラムを提供しています。12月に行われるDemoDayでのプレゼンテーションを経て選ばれたチームが、翌年3月のSXSWに参加する権利を得ます。このプロセスを通じて、参加チームは自らのプロジェクトを磨き上げ、国際舞台での発表に向けて準備を重ねることができます。
Todai To Texasプログラムは、日本の学生起業家や研究者に世界的な舞台での挑戦の機会を提供し、日本のイノベーションエコシステムの発展に大きく貢献しています。
Todai to Texas
学生の技術プロジェクトチームを、米国テキサス州オースティンで開催される「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」へ派遣し、展示やピッチなど通してグローバルな挑戦を支援するプロジェクト
参照元
- https://thebridge.jp/2015/03/todai-to-texas-sxsw-2015-part-2
- https://chizaizukan.com/pickup/report/19JAvt3SaPZ8UmalYc1fYN/
まとめ
これらの成功例は、日本のスタートアップがどのようにして国際的な注目を集め、成長を遂げることができるかを示しています。SXSWのような国際的な展示会への参加は、スタートアップが新しい市場を開拓し、グローバルなネットワークを構築するための重要な機会です。日本企業の皆さんもぜひ積極的に参加し、自社の技術や製品を世界に発信する場として活用してください。
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