こんにちは、SXSW Japanの宮川です。未来を見通すFuturist(未来予報™︎の専門家)として、私は常に新しい技術やアイデアの可能性に目を向けています。SXSWについては13年続けて参加しており、独自のレポートを毎年書いています。
先日行われたSTATION Aiオープングイベントの模様をレポートします!
Director of SXSW Japan
Futurist / SXSW Official Speaker
宮川麻衣子
地域のカルチャーを変革するグローバルカンファレンスの価値とは?
2024年11月1−2日にわたって名古屋・鶴舞にて開催された「STATION Aiオープニングイベント」にてSXSW Japan / Futuristの宮川がパネルセッションに参加いたしました。
2024年11月1日(土)。名古屋STATION Aiで行われたパネルセッション「地域のカルチャーを変革するグローバルカンファレンスの価値」に登壇し、共に登壇した方々と、地域が持つポテンシャルをどのように世界に発信していけるのか、その可能性を探りました。このパネルには、愛知県名古屋で開催される「Tech GALA」のプロデューサー奥田さん、世界的なスタートアップイベント「Slush」を通じて日本のイノベーションを支援するAnttiさん、日本のスタートアップエコシステムを牽引するイベント「IVS」を主催する今井さんが登壇。多角的な視点から意見が交わされる中で、私自身も新たな気づきと共に、地域に根ざしたグローバルイベントの可能性を改めて感じました。
パネル参加者の紹介
モデレーター:今井 遵 氏(株式会社Headline Japan / IVS事務局 アライアンス担当 執行役員 株式会社IMAJUN 代表取締役)
奥田 浩美 氏(株式会社ウィズグループ 代表取締役 | TechGALA プロデューサー)
宮川 麻衣子 (VISIONGRAPH Inc. / 未来予報株式会社 代表取締役 / Futurist / SXSW Japan)
Antti Sonninen 氏(Main Organizer, Takeoff Tokyo)
壇上には、4人のスピーカーが登場しました。まず、私宮川はSXSW Japan代表であり、未来の世界について描くことを専門とするFuturistです。その他名だたる登壇者の皆さんをご紹介します。
そして名古屋で開催されるTech GALAのプロデューサー奥田氏。イベントの名称からも分かる通り、奥田氏は日本独自のアイデンティティをグローバルに発信しつつ、地域を巻き込んだ新しい経済の仕組みを構築しようとしています。
Antti氏は、フィンランドのスタートアップ支援におけるキーパーソンです。フィンランドが世界に誇るスタートアップ支援の背景には、国を挙げた危機感があると語り、その視点は日本にも共感を呼び起こしました。
IVS(Infinity Ventures Summit)で地域連携の重要性を訴えてきた今井氏。この日はモデレーターとしてセッションの聞き手役をやって頂きました。その中で、国内外の様々なスタートアップイベントに関わる立場から、地域と協力して成長を遂げるための方策について、現場のリアルな意見を述べました。
Tech GALA:地域と世界をつなぐ新たな拠点として
名古屋で2025年2月に初めて開催される「Tech GALA」は、奥田さんの手によって、地域資産を発掘しグローバルな価値を見出す場として構想されています。奥田さんが語る「名古屋の地域資産」は単に産業や技術だけではなく、地元に根付く文化やコミュニティの魅力も含まれます。奥田さんは、これらの埋蔵資産を活かし、「スタートアップや次世代のビジネスを支援する新たなプラットフォーム」としてTech GALAを立ち上げると語っていました。
Tech GALAが名古屋にとって持つ意味は、SXSWにおけるオースティンの役割にも似ています。SXSWは1987年、地元紙オースティンクロニクルの支援を受けてスタートし、地域に根ざしつつも世界とつながるイベントへと成長してきました。奥田さんは、「Tech GALAを地域の発信拠点とし、愛知・名古屋エリアの強みであるモビリティやマテリアル、ライフサイエンスの分野で世界にインパクトを与えるイベントにしていきたい」と熱く語っていました。
奥田氏は「名古屋の地には、目に見えない埋蔵金のような地域資産が眠っている」と語ります。こうした地域のポテンシャルを、地元と連携しながら発掘・活用していくことが、グローバルイベントが目指すべき方向性であるとしました。例えば、Tech GALAでは、地元企業や大学が一体となり、地域の特性を生かしたイノベーションを創出する場が提供される予定です。
SlushとIVSに学ぶ、若者がつくるイノベーションの未来
このセッションで私が特に刺激を受けたのは、フィンランド発の「Slush」を日本で開催されたAnttiさんの話でした。彼が語るフィンランドの成功例は、日本にも示唆に富んでいます。Slushは、フィンランドの若い大学生たちの自主的な動きから生まれたそうです。彼らは、国内の危機的な経済状況を受けて、「このままではいけない」「自らの手で未来を切り開かなければならない」という危機感から行動を起こしたのです。Slushが地域に根ざしながら、世界的に知られるスタートアップイベントとなった背景には、国全体の支援と若者たちの情熱がありました。
今井さんが語った「IVS」の成功にも共通点があります。IVSは、地域の独自性や文化を尊重しつつ、若手リーダーたちにとって有益な場を提供しています。IVSの成功には「地域社会との協力が鍵」であると今井さんは強調し、地域とスタートアップが互いに影響し合い、成長を続けるエコシステムを築くことの重要性が語られました。SlushとIVSは、地域発でありながらもグローバルに広がる可能性を示す好例として、今後の日本のイベントのあり方を考える上で大きな参考になると感じました。
日本におけるスタートアップ支援の課題とTech GALAへの期待
一方で、日本のスタートアップエコシステムにはまだ多くの課題があります。奥田さんが指摘したように、日本の大手企業は海外には積極的に投資しているものの、国内スタートアップへの投資は未だ限定的です。CVC(企業ベンチャーキャピタル)も、今後はスタートアップと共に成長していくための体制を整え、地域に根ざした形での支援が求められます。
奥田さんの「Tech GALA」が目指すのは、まさにこの課題に対する一つの解決策です。Tech GALAでは、地域の資産を活かし、愛知・名古屋においてスタートアップ支援やビジネスマッチングが可能な場を提供します。名古屋は、モビリティ産業やマテリアル分野で突出した地域的強みを持っており、こうした分野のリーダーシップを発揮することで、地域の活性化に貢献できると考えています。奥田さんは「Tech GALAを通じて、名古屋がスタートアップや技術革新のハブとなることを目指したい」と意気込みを語っていました。
「違い」を受け入れることがもたらす未来
このセッションで私が改めて感じたのは、「違いを知ること」がいかに大きなインパクトを持つかということです。SXSWでも同様に、参加者は異なる文化や考え方に触れ、その過程で自分の固定観念や価値観に気づき、新たな視点を得ます。私も最初にSXSWに参加したとき、自分の中にあった「常識」がいかに狭かったかに驚きました。
今回のパネルで、奥田さん、Anttiさん、今井さんと共に考えた「地域に根ざしながらもグローバルな視野を持つ」という姿勢は、日本のスタートアップシーンにも大きな影響を与えるはずです。たとえば、Tech GALAやIVSを通じて、地域が持つ多様な資源が世界と連携し、イノベーションを生み出す場が増えていくことを期待しています。こうしたイベントに参加することで、自分自身が「グローバルな目を持つ地域のリーダー」として何ができるか、どのような変革をもたらせるかを考えることが、参加者にとっても有益になるでしょう。
終わりに:未来に向けた挑戦
今回のセッションを通じて、地域に眠る可能性を発掘し、それを世界へと発信するグローバルイベントの意義を再確認しました。私たちが目指すのは、ただ地域のカルチャーを変革するだけでなく、それを通じて新しい価値観や視点が育まれる場を創り出すことです。Tech GALAやSlush、IVSは、すでに地域発のグローバルイベントとして存在感を放ち、イノベーションを生み出す土壌を作り上げています。
未来の地域イノベーションは、異文化と交わり、新しい発想が生まれるところにこそあります。SXSWでは、「頭のヘルメットを外し、柔軟な姿勢で新しいものを受け入れる」ことが何よりも重要と最後にお話しさせて頂きました。参加者の皆様に伝えたいのは、SXSWのようなグローバルイベントに参加することで、自分が抱える固定観念や枠組みから解放され、まったく新しい視点がもたらされるということです。異なる価値観と交わり、他者のビジョンに触れることで、帰国後の地域活動にも多大な影響を与えられると確信しています。
SXSWは、言葉では表現しきれないほどの情熱とエネルギーに満ちた場所です。
ビジネスパーソン、アーティスト、その他どんな人にとっても宝の山のような場所です。
ここでの経験とつながりが、あなたの人生に新たな飛躍をもたらすでしょう。
SXSWでの体験は、一生忘れられないものになります。
創造性と夢を共有し、未来を共に作り上げましょう。
ぜひ、SXSWに足を運び、その素晴らしい世界を体験してみてください。
あなたの想像を超えた感動が、きっと待っています。
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