2025年のSXSW Pitch(ピッチ)にスタートアップとして挑戦しよう!

SXSW 2024 Pitch Ceremony – Photo by Christopher De La Rosa

こんにちは、SXSW Japanの高橋です!今回は、SXSWの目玉イベントの一つである「SXSW Pitch」について詳しく解説します。SXSW Pitchに参加しようか迷っている方、特に英語に自信がない方でも挑戦できるのか、わかりやすくご紹介します。

高橋

SXSW Japan / Researcher
高橋功樹

 

SXSW Pitchは、世界中のスタートアップが集まり、自社の製品やサービスを紹介するコンペティションです。2009年から始まり2025年では17回目を迎えます。SXSW Pitchのファイナリストに残ったスタートアップは巨大コミュニティに迎えられ、これまでに合計で$23.2億ドルの資金調達に成功しています。テクノロジー、エンターテインメント、ライフスタイルなど、多岐にわたる分野の革新的なアイデアを持つ企業が競い合い、注目を集める絶好の機会となっています。

↓現地の白熱するピッチの様子はこちら!

 

◆目的と意義

SXSW Pitchの目的は、新しいアイデアや技術を広めることです。また、スタートアップが投資家やメディアの注目を集める場としても機能しています。このイベントは、将来有望な企業が飛躍するための第一歩となることが多く、その意義は非常に大きいです。

◆2025年の開催日時

2025年は3月8日~9日に開催されます。

◆2025年の応募締め切り

早期エントリー:2024年6月25日~9月8日(100ドル 終了
通常エントリー:2024年9月9日~11月3日(220ドル

SXSW Pitchは、毎年変わりますが以下のようなカテゴリに分かれています(※2025年版)。各カテゴリには、それぞれの分野で最先端の技術やサービスを提供するスタートアップが参加し、独自のプレゼンテーションを行います。

アグリテック&フードテクノロジー

農業、園芸、水産養殖における収穫高の向上、効率性の向上、環境への影響の低減を実現するテクノロジー。 例としては、食糧の持続可能性、農場データ、土壌微生物データ、作物保護、バイオ肥料、サプライチェーンの透明性、農産食品検査、代替タンパク質、動物衛生、水産養殖、農場管理ソフトウェア、水耕栽培、垂直農法、消費者向けパッケージ商品(CPG)、精密農業などがあります。

エンタープライズ、スマートデータ、フィンテック、そして未来のワーク

オートメーションや新しいワークフロー、分析などを通じて情報データを簡素化することで、企業や個人の生産性を向上させるテクノロジー。これらの新興企業は、業務の未来、データ収集、管理、整理、ビッグデータのシミュレーション、分析、データの視覚化と提示、解釈、プライバシーとセキュリティ、予測分析、決済、暗号通貨、資金共有プラットフォーム、不正防止、オープンバンキング、機械学習運用、認知コンピューティング、API、パーソナライゼーション、サプライチェーン、ビジネスコミュニケーション、プロジェクト管理、決済、人事、クラウドコンピューティング、およびビジネス、金融、広告など、さまざまな業界にわたる拡張機能などに応用される可能性があります。

エンターテインメント、メディア、スポーツ、コンテンツ

余暇、情報、スポーツ、エンターテインメントの体験を再創造するテクノロジーやアプリケーション。これらのテクノロジーがサービスを提供する業界には、ゲーム、音楽、映画、テレビ、ビデオ、アート、ニュース、出版、eスポーツ、スポーツ分析、ストリーミング、ポッドキャスティング、オーディオコンテンツ、ソーシャルメディア、ユーザー生成コンテンツプラットフォーム、デジタルストーリーテリングなどがあります。

拡張現実、Web3、音声およびロボット

デジタルエコシステムにおいて、人々が周囲の人々とつながり、コミュニケーションを図り、ユニークな人生経験を共有する方法を向上させるテクノロジー。これらのテクノロジーは、機械による模擬的な知性、意識、容易さ、音声、モノのインターネット、スマートデバイス、または人間の支援なしに機械がタスクを実行、予測、合理化する能力に関連している可能性があります。これらの新興企業は、幅広い問題の解決を目指しており、Web 3.0アプリケーション、ウェアラブル、ブロックチェーン技術、マルチセンサーの統合、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、スーパーアプリ、ジェネレーティブAI、AIチップ、自律システム、ヒューマンロボットインタラクション、RPA(Robotic Process Automation)、自然言語処理など、さまざまなテクノロジーが含まれます

ヘルステック、メドテック、バイオテック、アクセシビリティ

医療と健康増進を促進し、個人と医療システムや施設、医療技術や機器、ケアチーム、医療提供者、保険、企業や個人の健康サービス、公衆衛生や社会サービスを結びつける、人間中心のアプリケーションに焦点を当てたテクノロジー。これらのスタートアップには、高齢化や老年学、ワクチン、mRNA技術、一般的な健康増進、支援技術、診断、治療、生殖、遺伝学、スポーツや運動、家庭用フィットネス、大麻、睡眠、医療用ウェアラブル技術などのアプリケーションが含まれる可能性があります。

Innovative World Tech

このカテゴリーは、他のSXSW Pitchカテゴリに該当しない、創造的で革新的なアプリケーション、製品、サービス、および新しいテクノロジーの基盤となるテクノロジーを対象としています。このカテゴリに該当する例としては、社会貢献、ソーシャルネットワーキング、サプライチェーン、決済およびフィンテック、バイオテクノロジーおよびナノテクノロジー、ペットテクノロジー、ドローン、住宅ローン借り換え、量子コンピューティングおよびコンピューターチップテクノロジーなどがあります(ただし、これらに限定されません)

セキュリティ、GovTech、宇宙

このカテゴリーのテクノロジーは、緊急対応者やその他の公共安全要員が地域社会に貢献する能力を向上させます。 このカテゴリーでは、6つの主要分野のテクノロジーを活用しています。 人工知能/機械学習、自律性、サイバー、エネルギー、人間システム、宇宙です。自律システムは、さらに「認識とセキュリティ」、「無人航空システム」、「海洋の自律性」に細分化することができます。 宇宙はさらに、「打ち上げサービス」、「領域と状況認識」、「輸送とナビゲーション」、「衛星と接続性」、「製造」、「極超音速」に細分化することができます。

スマートシティ、交通、持続可能性

スマートシティを創出・発展させ、あるいは地域環境(建物、近隣地域、コミュニティ、公共スペースなど)にサービスや製品を提供することで持続可能な慣行を強化する技術。これらのイノベーションは、持続可能性、気候変動、再生可能エネルギー、不動産開発、交通、観光、物流、製品配送、自動運転車、ライドシェア、インフラ、公益事業、公共事業、セキュリティ、人口データ、政府および市民サービス、都市計画および設計、廃棄物管理およびリサイクル、水管理および保全、グリーンビルディング、大気質モニタリングおよび公害防止、災害への強靭性および緊急事態管理など、さまざまな分野に応用される可能性があります。

学生スタートアップ

上記のカテゴリーに焦点を当てた革新的なテクノロジーを展示する学生によるスタートアップ。スタートアップ経営チームの学生は、ファイナリストまたは補欠に選出された場合、SXSWピッチでプレゼンテーションを行う必要があります。また、SXSWピッチイベント期間中に在籍している必要があり、準学士、学士、修士、博士、専門職学位のいずれかを取得しようとしている学生である必要があります。

SXSW Pitchは、投資家やメディアの注目を集める絶好の機会です。スタートアップにとっては、資金調達やパートナーシップの構築、ブランド認知度の向上に繋がる場でもあります。

参加企業は限られた時間内でプレゼンテーションを行い、審査員や観客に自社の強みをアピールします。質疑応答のセッションもあり、深い議論が展開されることが多いです。

  • NotCo:2020年のSXSW Pitchに参加したNotCoは、AIを活用して植物由来の代替食品を開発するスタートアップです。彼らの製品は、環境に優しく、動物性食品に匹敵する味と栄養価を提供しています。SXSWでの成功を機に、NotCoは南米から北米市場へと進出し、大きな成長を遂げました。
  • UPSIDE Foods(旧名:Memphis Meats):当時のMemphis Meatsは、2018年にSXSW Pitchで紹介され、培養肉の開発で注目を集めました。彼らの技術は、動物を育てずに肉を生産するもので、持続可能な食糧生産の未来を切り開いています。SXSWでの露出により、多くの投資を獲得し、研究開発を加速させました。

日本のスタートアップは2024年までに4社がファイナリストに選ばれています。SXSW Pitchはスタートアップコミュニティへの登竜門と呼ばれており、大変厳しい審査が行われます。ファイナリストになるだけでも最高に栄誉なことと見なされ、会場でピッチを行うスタートアップには、1社1社、スタンディングオベーションが贈られます。

  • Lyric Speaker(SIX)- 歌詞を表示するスピーカー 2015年:次世代型スピーカー「Lyric Speaker」でSXSW Accelerator(現SXSW Pitch)のファイナリストに選ばれました。「Lyric Speaker」は、再生中の楽曲の歌詞をリアルタイムでディスプレイに表示するスピーカーです。透明なスクリーンに歌詞が浮かび上がることで、音楽と視覚的な体験を融合させる新しい形のリスニング体験を提供します。
  • Stroly – 地図プラットフォーム 2019年:イラストマップをインタラクティブなモバイル体験に変えるプラットフォームを提供しています。ユーザーは自身のマップをアップロードし、位置情報とリンクさせることができます。Strolyのマップは、GPSを利用して現在地を表示し、地図の切り替えや観光スポットの情報表示などが可能です。例えば、祇園祭のデジタルマップや地域グルメ企画のデジタルマップなど、様々な用途で利用されています。2019年にはSXSWの公式マップスポンサーにもなりました。
  • ZeBrand – ブランド構築支援ツール 2022年:ブランド構築を支援するプラットフォームを提供する企業です。特にスタートアップや中小企業向けに、ブランドガイドラインの作成、ストーリーテリング、デザイン、マーケティング資産の管理などを支援します。ユーザーは、事前にデザインされたテンプレートや自動同期機能を利用して、ブランドの一貫性を保ちながら効率的にブランド構築を行うことができます。
  • I’mbesideyou – リアルタイムコミュニケーション解析ツール 2022年:リアルタイムでコミュニケーションを解析するツールを提供する企業です。このツールは、画像解析や音声解析を用いて、オンライン上の個々の特性を可視化し、より深い理解を促進します。例えば、オンライン教育、セールス、HR、メンタルヘルスなどの分野で、AIを活用してパフォーマンスの向上や問題の早期発見を支援します。2020年に設立され、AI解析技術を駆使して個々のニーズに合わせたソリューションを提供しています。 

SXSW Pitch: Future of Work Technologies – SXSW 2023 – Photo by Keira Lindgren
Mike Asem, Mitch Kapor, mariano gonzSXSW Pitch: Future of Work Technologies – SXSW 2023 – Photo by Keira Lindgren

応募条件(※2025年)

SXSW Pitchに応募するための基本的な条件は以下の通りです。

  • 製品またはサービスの開発時期: 2022年1月1日以降に構想されたものであること。
  • 応募数: 1社につき1つの製品またはサービスのみ応募可能。
  • 資金調達額: 総資金調達額が1,000万ドル未満であること。
  • 所有権: 応募する企業の創業者が一部の所有権を保持していること。
  • 法的登録: 法的に登録され、関連する規制や法律に準拠していること。
  • カテゴリー適合性: 応募する製品またはサービスがSXSW Pitchのカテゴリーのいずれかに該当すること。

詳しくはこちらをよく読んでご応募ください。

応募プロセス

応募プロセスは以下のステップで進行します。

  1. エントリー期間(現地時間): 早期エントリーは2025年6月25日から9月8日まで(エントリー費用$100)、通常エントリーは9月9日から11月3日まで(エントリー費用$220)。締め切り後は一切認められません。
  2. オンライン応募: SXSWの公式サイトから応募フォームに必要事項を入力し、エントリーフィーを支払います。
  3. 審査: 応募書類を基に、事前審査が行われ、ファイナリストが選定されます。
  4. ファイナリスト発表: 選ばれたファイナリストは、SXSW本番までにオンラインでピッチのコーチングを受けることができます。
  5. 本番ピッチ: SXSWの会場で、投資家やオーディエンスに対してピッチを行います。

審査基準

SXSW Pitchの審査基準は以下の5つの要素に基づいています。

  • クリエイティビティ: アイデアの独創性と革新性
  • ポテンシャル: 市場での成長可能性と影響力
  • 善良性(Goodness): 社会的な意義や貢献度
  • 機能性: 製品やサービスの実用性とユーザビリティ
  • チーム: チームの能力と経験

応募のコツ

SXSW Pitchで成功するための応募のコツは以下の通りです。

  • 明確なビジョンとミッションが大事。企業のビジョンやミッションを明確に伝えることが重要です。審査員に対して、なぜあなたのプロジェクトが重要であるかを説得力を持って説明しましょう。
  • 製品やサービスのデモを用意し、実際の動作を見せることで、審査員に具体的なイメージを持たせることができます。
  • 市場のニーズや競合分析をしっかり行い、自社の強みをアピールできるように準備しましょう。
  • 単なる事実の羅列ではなく、感情に訴えるストーリーテリングを用いることで、審査員の関心を引きつけることができます。
  • SXSWのイベント期間中に積極的にネットワーキングを行い、投資家や業界関係者との関係を築くことが重要です。

英語が苦手な人がSXSW Pitchに挑戦するためには、以下の準備が重要です。これらのポイントは、非ネイティブスピーカーが直面する特有の課題を克服し、自信を持ってプレゼンテーションを行うための具体的な方法を提供します。

英語力の向上

  • 発音とアクセントの練習: ネイティブスピーカーから発音を学び、頻繁に練習することが重要です。録音した自分の声を聞き返し、改善点を見つけましょう。
  • 文法と語彙の強化: ネイティブスピーカーや英語の専門家に文法のアドバイスを求め、頻繁に練習することで流暢さを向上させます。

ピッチの準備

  • 徹底的なリハーサル: プレゼンテーションを繰り返し練習し、質問に対する回答も準備します。
  • 時間管理: ピッチは短く、30秒から2分以内に収めるようにします。長すぎると情報が多すぎて理解しにくくなります。
  • 個人的なストーリーを含める: 自分自身や会社の動機について話し、聴衆に共感を持ってもらうようにします。

ネットワーキングとサポートの活用

  • 言語コーチの利用: 英語のビジネスコーチを見つけて、ピッチの準備や語彙の強化を行います。
  • 過去のファイナリストの経験を学ぶ: 過去のSXSW Pitchファイナリストのビデオを見て、どのようにプレゼンテーションを行っているかを学びます。

自信を持つための心の準備

  • スローダウン: 話すスピードを落とし、明確に発音することで聴衆に理解しやすくします。
  • ポーズの活用: 話の途中で適度にポーズを入れ、情報を小分けにして伝えることで、聴衆が内容を消化しやすくなります。

これらの準備を通じて、英語が苦手な人でもSXSW Pitchで効果的なプレゼンテーションを行うことが可能です。しっかりとした計画と練習を重ね、自信を持って挑戦しましょう。

SXSW Pitchは、世界中のスタートアップが集まり、革新的なアイデアを競い合う場です。日本から参加するスタートアップも多く、その成功例は数多くあります。英語に自信がない方でも、シンプルな英語とビジュアル資料を駆使することで、効果的にプレゼンテーションを行うことができます。
皆さんも、ぜひSXSW Pitchに参加して、グローバルなネットワークを広げましょう。SXSW Pitchの詳細は、SXSW公式サイト内のこちらのページをご覧ください。