SXSW KEYWORDS #02|次に仕事で聞く言葉
AIで一定水準の文章や資料をすぐ作れるようになった。その一方で、「誰が判断したのか」「この人に任せたい」と感じる場面もある。AIが広がるほど相対的に価値が上がる、人間側の仕事に付いた言葉を追います。
「SXSW KEYWORDS」は、世界で使われ始めた新しい言葉を取り上げ、その意味と背景、SXSWで関連するテーマがどう語られていたかを短く紹介するシリーズです。まだ日本ではあまり聞かないけれど、意味を知ると「あ、それ最近あるかも」と思える言葉。そんな、これから仕事の中で耳にするかもしれないキーワードを、FuturistでありSXSW Japan代表の宮川の視点から追っていきます。
KEYWORD GUIDE
ヒューマン・プレミアムとは?
AIで調査も文章も画像も作れるようになった。それでも、大事な提案の最後は「この人がそう言うなら」で決まったり、難しい顧客対応は経験のある人に任せたくなったりする。AIでできることが増えるほど、人に任せる理由が逆に気になる場面はないでしょうか。
Human Premium
ヒューマン・プレミアム
AIが反復的・定型的な知識作業を担えるようになるほど、判断、想像力、信頼、関係性など、人間側に残る価値が相対的に高くなるという考え方です。
HFS Researchは2025年、この考え方を「Human Premium」として整理し、その中核に Imagination(想像力) / Intimacy(関係性) / Integrity(誠実さ) の3つを挙げています。
AIが何もできないから、人間に価値が残るという話ではありません。
むしろAIが「十分にうまい」成果物を大量に作れるようになるほど、どれを選ぶのか、誰の判断を信じるのか、誰が責任を持つのかが目立つようになります。
75%
HFS Pulse Study 2025で、人間主導のサービスや業務プロセスをAI主導へ置き換えている、または今後3年で置き換える予定と回答した企業リーダーの割合
出典:HFS Research, “Build your Human Premium to win in the age of LLMs”
3つのI
HFS ResearchがHuman Premiumの中核として挙げる Imagination / Intimacy / Integrity
こんな時に使える?!
ヒューマン・プレミアムは、AIに任せられる仕事が増えた時に、「では、人に残したい価値は何だろう?」と話すために使えます。
“As AI handles more routine work, our human premium is judgment, trust, and customer relationships.”
「AIが定型業務を担うほど、私たちのヒューマン・プレミアムは判断力や信頼、顧客との関係になる」
- 「この業務、どこまでAIに任せて、どこにヒューマン・プレミアムを残す?」
「提案書自体はAIでも作れるけれど、最後の判断と顧客との信頼は人が持つ部分かもしれないね」
言葉があると、「人間らしさ」のような大きな話だけでなく、仕事のどこに人が関わる価値を残すのかを具体的に話しやすくなります。
日本ではどう広がっている?
日本では2026年に入ってから、「ヒューマン・プレミアム」という言葉を企業戦略やビジネスメディアで確認できるようになっています。
ANAグループは2026年の中期経営戦略で、「Digital by Default × Human Premium」を掲げています。デジタルを活用できる仕事はデジタルへ置き換え、その分、人の力を最大限発揮して差別化するという考え方です。
また、Communeは2026年6月に「ヒューマンプレミアム」を信頼やコミュニティの文脈で紹介。Forbes JAPANも同年9月に「ヒューマン・プレミアム」を記事タイトルに使っています。
まだ一般的なビジネス用語として定着した段階ではありませんが、人材、DX、マーケティング、顧客体験など、複数の領域で使われ始めている言葉として見ておくとよさそうです。
SXSW VIEW
「ヒューマン・プレミアム」という言葉が広がる中、SXSWではどう話されていた?
SXSWとPwCによる2026年の公式Insights Reportでは、全体テーマとして “The Future Belongs to the Deeply Human” が掲げられています。
AIなどの技術が急速に広がる中で、人間のつながり、創造性、文化、判断をどのように扱うか。Human Premiumと同じ言葉ではありませんが、背景にある問題はかなり近いものでした。
SXSW 2026 SESSION
The Great Recalibration: Centering Humanity in the Age of AI
このセッションでは、AI生成コンテンツが増える一方で、人々が “the tactile, the real, and the human” を求めているという問題設定から、AIと人間の関係が議論されました。
SXSW 2026 SESSION
こちらでは、AIエージェントと人間に対する購買者の反応を比較し、AIが注意を引く一方で、人間の方が記憶に残る場面があることなどが紹介されました。
SXSW 2026で見えていたのは、「AIに何ができるか」に加えて、AIができることが増えた後、人間側の何が価値として残るのかという議論でした。Human Premiumは、その複数の議論をひとつの言葉で捉えやすくします。

宮川麻衣子
Futurist
SXSW Japan 代表
2012年よりSXSWに継続参加
Futurist Perspective
AIを使う時間が増えるほど、「人間にしかできないこと」を探すというより、「私はこの人の判断を信じる」「この人が選んだものなら見たい」と感じる場面が気になるようになりました。
同じようなアウトプットを誰でも短時間で作れるなら、差が出るのは最後に何を選ぶか、その結果に誰が責任を持つかという部分です。
Human Premiumという言葉は、その感覚を仕事の話として扱いやすくしてくれます。
KEYWORD TIMELINE
「ヒューマン・プレミアム」という言葉はこのように広まっている
2025年6月
HFS Researchが「Build your Human Premium to win in the age of LLMs」を公開。Human Premiumを Imagination / Intimacy / Integrity の3つから整理する。
2026年春
SXSW 2026で、人間中心のAI、信頼、創造性、つながりを扱うセッションが複数開催。SXSW / PwC Insights Reportのテーマは「The Future Belongs to the Deeply Human」。
2026年
ANAグループが中期経営戦略で「Digital by Default × Human Premium」を掲げ、人の力を最大限発揮することをDXと組み合わせた差別化戦略として位置づける。
2026年5月〜9月
Adecco Group、Commune、Forbes JAPANなどでも「Human Premium / ヒューマン・プレミアム」が取り上げられる。
2026年現在
AI導入後の人材、リーダーシップ、顧客体験、DXなどを説明する言葉として、複数の領域で使用例が確認できる。
SOURCE
- HFS Research, “Build your Human Premium to win in the age of LLMs”
- Adecco Group, “The human premium: Leadership beyond the algorithm”
- ANAグループ 2026-2028年度 中期経営戦略
- Commune, 「AI時代に信頼を築くヒューマンプレミアムという発想」
- Forbes JAPAN, 「ヒューマン・プレミアム——AI時代に『人間の違い』が最大の資産になる」
- SXSW / PwC, 2026 SXSW Insights Report
- SXSW 2026, “The Great Recalibration: Centering Humanity in the Age of AI”
- SXSW 2026, “Humans or AI? What Buyers Prefer, According to Neuroscience”

