【レポート】京都発スタートアップが見た“SXSWの本質”と、“世界への小さな扉” / SXSW2025報告会@京都

こんにちは!SXSW Japanの高橋です。


3月に開催されたSXSW2025には、日本から約800名の皆様にご参加いただきました。SXSW Japanでは4月に国内での報告会イベントを、東京・京都・名古屋の3都市で開催。実際にSXSW2025に参加された方に、それぞれの体験や学びをシェアしていただくパネルセッションを企画しました。

本記事では4月8日に開催された京都での報告会の様子をレポートします。

SXSW Japan / Researcher
高橋功樹

4月8日、京都・四条烏丸の「KOIN(Kyoto Open Innovation Network)」で開催されたSXSW2025報告会@京都。60名超の参加者が詰めかけた会場では、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2025に参加した地元スタートアップたちが、リアルな体験談を交えて語り合いました。

 

SXSWとは何か?そして、なぜ京都から挑戦するのか?

 

SXSWは毎年春にアメリカ・テキサス州オースティンで開催される、世界最大級の複合イベント。

 
音楽・映画・テクノロジー・スタートアップ・カルチャーが交差し、世界中から10万人以上が訪れる「未来のショーケース」とも言える場所です。

 

そんな世界の舞台に、なぜ今「京都発」のスタートアップたちが挑んでいるのか。
答えは、この日のパネルセッション①にありました。

 


登壇者

 

  • ミツフジ株式会社/蒲生さん
  • メトロウェザー株式会社/宮本さん
  • Tomorrow Never Knows/Mochiさん
  • コネクトフリー株式会社/帝都さん
  • 京都府 産業振興課/中原さん
     
  • モデレーター SXSW Japan 宮川
     

 

京都から「世界の課題」へ切り込むスタートアップたち

 

まず登壇したのは、ミツフジ株式会社の蒲生さん。

 
同社は“着るだけで生体データを取得できる”ウェアラブル繊維「hamon」を展開しており、SXSWではその技術を活かした新製品を出展。企業ブースに立つ蒲生さんの姿勢からは、「自社の技術で世界の医療・ヘルスケア分野を支えたい」という確かな熱意が伝わってきました。

 

次に紹介されたのは、メトロウェザー株式会社の挑戦。

 
「風を視る」——そんな一見抽象的なテーマを、同社は独自の技術が組み込まれた「ドップラーライダー」で具現化。風の動きを数十メートル単位で“可視化”し、ドローン物流、空港の安全管理、さらには国際ヨットレースでの活用まで応用が広がるこの技術は、SXSWでも「まさに未来」として注目を集めたといいます。

 

SXSWの会場では、専門分野の人だけでなく、メディア、映画関係者や学生、アーティストからも声がかかり、そこから思いがけない商談に発展する場面もあったそうです。

 

「自分たちでは考えつかなかった“風の使い道”が、現地の人たちとの会話で見えてきた」と宮本さん。これはまさに、SXSWならではの化学反応です。

 


 

“移動に自由を”──旅の間に生まれる偶然を設計するAI

 

「人生も移動も、AからBに直行するだけじゃ面白くないですよね?」

 

会場がクスッと笑う中、プレゼンを始めたのはTomorrow Never KnowsMochiさん

 
彼女らの開発するアプリ「TimeSpace」は、ユーザーの“好み”をAIが学習し、空き時間に体験できるプランを即提案するという革新的な移動支援ツール。SXSWのような慣れない土地で、限られた時間を有意義に過ごす“選択肢”を提供するアプリです。

 

オースティンでの展示では、現地飲食店のリアルな情報を反映し、観光客・地元住民両方に「知らなかった体験」に出会う楽しさを提供。「移動のLLM(大規模言語モデル)を提案した」と表現するこのプロダクトは、「地図アプリでもSNSでも満たせなかった“余白の時間”」に光を当てていました。

 


 

“インターネットの次”をつくる京都発ディープテック

 

続いて登壇したのは、コネクトフリー株式会社代表・帝都さん

 
彼らが挑んでいるのは、なんと「インターネットの再発明」。今のインターネット構造が抱える限界を乗り越える、“第3のインターネット”を目指したインフラ設計です。

 

例えば、医療現場でのCTやMRI画像の転送にCD-Rを使わざるを得ない日本の現状。この課題に対し、IPアドレスを「端末が直接持てる」特許技術で解決しようというのが彼らのビジョン。SXSWでは「社会インフラを変えるスケールの提案」として、業界関係者からの高い関心を集めていました。

 


 

京都府の想い:「世界を目指す起業家を、後押ししたい」

 

今回のプロジェクトを統括する、京都府 産業振興課の中原さん

 
「5年前に比べ、京都のスタートアップ数は1.6倍に増えました。でも、本当の勝負はこれからです」

 
そう語る中原さんは、SXSWを「プロダクトを“世界でどう実装するか”を考える最高の場」と位置づけ、今後も京都府として全力で支援していくと明言。

 

彼女はSXSWを「展示の場」ではなく、「コミュニティが未来を生み出す場所」として捉えていました。まさに、出展するだけで終わらない“その先”を見据えた視点です。

 

 


 

京都というブランドが海外で強く響いた

 

今回登壇したスタートアップの多くが語ったのが、「京都であること自体が強みになった」という気づきです。

 

「京都の企業」「京都府のブース」と名乗っただけで、注目され、話が弾む。それは海外の人たちにとって、“Kyoto”という言葉がカルチャーやクラフト、テクノロジーの象徴としてすでに認識されているからでした。

 

ミツフジ株式会社の蒲生さんは、「小さな会社がSXSWに挑むのは簡単なことではなかったが、京都ブランドに助けられた」と語ります。

 

この“静かな信頼感”は、他の都市にはない京都の強みです。京都には文化、技術、伝統と革新が共存する土壌があります。そこから生まれるプロダクトやサービスは、単なる“便利さ”だけでなく、“哲学”や“背景の物語”まで含んでいます。だからこそ、SXSWのようにアイデンティティが重視される場所では大きなアドバンテージとなります。

 


 

多様性と偶然が交差する場、SXSWという名の未来

 

この日、登壇者たちの共通点は——「SXSWで“予定調和じゃない出会い”を経験した」ということ。

 

業界の枠を超えた反応、展示中の小さな会話、技術ではなく“物語”で共鳴してくれた誰か。そのすべてが、次のプロダクト、次のマーケット、次の出会いへと繋がっていく。

 

京都から世界へ。
SXSWは、その“一歩目”にぴったりな場所であることを、彼らの声が証明してくれていました。

 


 

SXSWはゴールではなく、始まり

 

今回のSXSW報告会を通じて見えてきたのは、SXSWは「挑戦の場」であると同時に、「次の扉が開く場所」だということです。

京都という都市が持つ静かで強いパワーと、SXSWのもつ圧倒的な多様性。

 

このふたつが交わったとき、そこにはこれまでにない出会いと、世界へ向かう足がかりが生まれます。

SXSW2026に向けて、次の挑戦者は誰になるのか。

その舞台は、もうすぐ動き始めます。

 


 

📌 SXSWへの参加や展示に興味がある方は、SXSW Japan Officeまでお気軽にご相談ください。

 

あなたのアイデアや技術が、世界の誰かの未来につながるかもしれません。