自治体はSXSWをどう活用できる?|愛知県の継続参加に見る海外連携のつくり方

SXSW JAPAN CASE STUDY|PUBLIC SECTOR × STARTUP ECOSYSTEM

自治体が海外カンファレンスを活用する方法は、ブースを一度出すことだけではありません。学生派遣、スタートアップ支援、現地ネットワーク、組織同士の対話へ。愛知県とSXSWの複数年の関わりを追うと、その広がり方が見えてきます。

ABOUT THIS CASE

この記事は、2025年4月10日にAustinのSXSW Centerで行われた、愛知県知事とSXSW社Hugh Forrest社長との面談を伝えた記事をもとに、愛知県による継続的なSXSW活用のケーススタディとして再編集したものです。

2026年9月現在、愛知県によるSXSWへの取り組みはその後も継続しており、2027年開催に向けたスタートアップ出展支援も実施されています。

2025年4月10日、AustinのSXSW Centerで、SXSW社のHugh Forrest社長と愛知県の大村秀章知事が面談しました。

ただ、この出来事だけを見ると、「自治体トップとSXSWトップが会談した」という単発のニュースに見えます。

実際には、その前に複数年にわたる取り組みがありました。

大学・学生との交流。

スタートアップの海外展開支援。

SXSWへの出展。

Austinのエコシステムとの接点づくり。

その中に、2025年の面談も位置づけられます。

ONE EVENT → CONTINUOUS RELATIONSHIP

一度の海外出展として見るのではなく、
何年かけて接点を増やしていくかを見る。

2025年の会談から始まった関係ではない

愛知県とAustinのスタートアップ・エコシステムとの連携は、2025年に突然始まったものではありません。

愛知県は2018年度から、University of Texas at Austinと連携するA2(Aichi-Austin)Innovation Kick-start Programを実施しています。

SXSWについても、2019年から2024年までに4回、愛知県の学生チームを派遣しました。

そして2025年には、県内スタートアップ3社のSXSW出展を支援。愛知県職員も現地へ参加しました。

AICHI × AUSTIN / SXSW

2018年度|Austinとの連携プログラム
University of Texas at Austinとの連携によるA2 Innovation Kick-start Programを開始。

2019–2024|学生チームをSXSWへ
4回にわたり学生チームがSXSWへ参加し、研究・開発成果を発表。

2025年3月|スタートアップ出展支援
県内スタートアップ3社のSXSW 2025への出展を支援。

2025年4月|SXSW社との面談
AustinのSXSW CenterでHugh Forrest社長と大村秀章知事が面談。STATION Ai、TechGALA Japan、SXSWを含む今後の連携について意見交換。

2026年|SXSW 2027への支援を募集
A2プログラムの一環として、SXSW 2027へ出展するスタートアップの支援を継続。

トップ同士の面談で話されたのも、「次の出展」だけではなかった

2025年4月の面談では、それまでのSXSW参加実績を確認するだけでなく、より広い連携について話が交わされました。

愛知県側からは、県内スタートアップへのSXSW出展支援を継続する考えに加え、STATION AiやTechGALA Japanを含めたAustinとのネットワークについて説明がありました。

Hugh Forrest社長側からも、SXSWとTechGALA Japanが国際的な参加者を受け入れる点で共通しているとの認識が示され、今後も連携関係を強めることで一致しています。

ここで変わっているのは、関係する主体の範囲です。

最初は、学生や研究者が海外へ行く機会。

そこから、スタートアップの海外展開。

さらに、STATION AiやTechGALA Japanといった愛知側の拠点・イベントとAustin側との接点へ。

「誰をSXSWへ送るか」だけだった話が、徐々に地域同士のエコシステムをどう接続するかという話へ広がっています。

単発の海外出展と、継続参加では残るものが違う

海外カンファレンスへの参加は、一回ごとに成果を考えることもできます。

何件商談したか。

何人と名刺交換したか。

何社が出展したか。

それも重要な記録です。

一方、愛知県の事例を時系列で見ると、一回では測りにくいものも見えてきます。

以前会った人に、翌年また会う。

学生として参加した層と、スタートアップとして参加する層が生まれる。

Austinで得た接点を、日本国内のSTATION AiやTechGALA Japanへつなぐ。

参加回数が増えるほど、ひとつのイベントへの参加ではなく、複数の接点を持つ関係になっていきます。

FROM EVENT TO NETWORK

「今年、何を得たか」だけではなく、
「去年までの接点を、今年どこまで広げられたか」という見方もできる。

愛知県の事例に見える、5つの構造

WHAT THE CASE SHOWS

01|同じ地域と複数年関わる
Austinとの関係を一度の視察や出展で終わらせず、年をまたいで継続している。

02|参加する主体が一つではない
学生、スタートアップ、行政職員など、異なる層がAustinやSXSWとの接点を持っている。

03|現地側の組織と直接つながる
SXSWだけでなく、University of Texas at Austinなど、現地エコシステムとの関係を並行して持っている。

04|海外で得た接点を国内へ戻す
STATION AiやTechGALA Japanなど、愛知側の拠点・イベントとの接続も議論されている。

05|翌年の参加へつなげる
単年度のプロジェクトとして閉じず、次年度以降の参加機会が継続して設計されている。

2025年の面談は、「到達点」というより途中の一場面だった

元の記事では、Hugh Forrest社長との面談を一つの成果として紹介しました。

その見方自体は変わりません。

ただ、2026年から振り返ると、この面談だけをゴールとして見るよりも、長く続く一連の取り組みの途中にあった出来事として見る方が、全体像を捉えやすくなっています。

UPDATE|SEPTEMBER 2026

愛知県は2026年6月、A2(Aichi-Austin)Innovation Kick-start Programの一環として、SXSW 2027へ出展するスタートアップの募集を実施しました。

対象となるスタートアップの出展料や入場バッジ、渡航費の一部を支援する内容で、2025年の面談後もSXSWを活用した海外展開支援が続いていることが確認できます。

海外カンファレンスを「点」ではなく「線」で見る

この事例から読み取れるのは、自治体の海外カンファレンス活用には、出展ブース以外にも複数の接点があり得るということです。

人材を送り出す。

企業の挑戦を支える。

現地の大学や組織とつながる。

海外でできた関係を国内の拠点やイベントへ戻す。

そして翌年、また別の参加者がその関係を使う。

一つひとつを別の事業として見るより、時間軸の上に並べることで、地域と海外エコシステムの関係がどう形成されてきたのかが見えやすくなります。

SXSW JAPAN NOTE

海外イベントへの参加を「一回の成果」で切らず、
次の接点が何につながったかまで追ってみる。