SXSW JAPAN CASE STUDY|EXHIBITION & STARTUP
名古屋のドローンメーカーProdroneと、AIクリエイティブスタートアップTetra Tokyo。2025年3月、2社はSXSWの愛知県ブースに立っていました。持っていったものも、現地での見せ方も、その後に続いた展開も異なります。2社の経験から、SXSWへの海外出展で実際に何が起きていたのかを振り返ります。
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この記事は、2025年4月9日にSTATION Aiで開催した「SXSW 2025報告会@名古屋」でのパネルセッションをもとに再編集したものです。
登壇したのは、株式会社Prodrone代表取締役社長の戸谷俊介さんと、Tetra Tokyo株式会社代表の市川俊之さん。2025年3月のSXSWを終えたばかりの2人に、現地で何を見せ、どんな反応があり、次に何を考えていたのかを聞きました。その後に公開された各社の情報も一部追記しています。
同じ愛知県ブースへの出展でも、2社のSXSWはかなり違うものでした。
Prodroneが持ち込んだのは、災害対応のための産業用ドローン。その技術を、愛知という土地に蓄積してきたものづくりの歴史と一緒に語りました。
Tetra Tokyoが見せたのは、AIと人間の共創による広告メッセージ生成の仕組みです。しかしブースに並んでいたのは、デジタルサービスの説明パネルばかりではありません。招き猫、ガチャ、日本的な映像、香水。Austinの学生もブースに入りました。
一方は技術の背景にある「愛知」を語り、もう一方は「日本」そのものを会話の入口にする。同じ場所に立った2社を追うと、海外出展という言葉だけでは括れない、それぞれのSXSWが見えてきます。
まず2社が感じた、SXSWという場所の違い
Prodroneの戸谷さんは、報告会でSXSWについてこんな言い方をしていました。
「SXSWって、イベントじゃないんですよ。フェスなんです」
— 株式会社Prodrone 戸谷俊介さん
戸谷さんが続けて話していたのは、「全員が参加者」という感覚でした。
「イベントって、主催者がいて、出展者がいて、来場者がいる。でもSXSWは違う。主催者はいても目立たないし、誰かが“客”という立場でいるわけでもない。全員が“参加者”なんです」
— 株式会社Prodrone 戸谷俊介さん
実際、SXSWの期間中はAustin Convention Centerの展示会場だけで一日が完結しません。セッションへ行き、街中のイベントをのぞき、食事やパーティーへ移動する。その途中で知り合った人と、翌日また別の場所で会うこともあります。
2社の話にも、ブースの中で起きたことと、その外側で起きたことの両方が登場しました。
CASE 01|Prodroneは、ドローンの後ろにある「愛知」まで語った
名古屋に本社を置くProdroneは、産業用ドローンを開発する企業です。SXSW 2025ではAustin Convention Centerの「AICHI JAPAN」ブースに出展し、災害対応モデル「PRODRONE RESCUE」を展示。高速ヘリコプター型ドローン「PRODRONE GT-M」など、防災時の活用を想定した技術も紹介しました。
戸谷さん自身も、京都府と愛知県が主催した「Now is Japan’s Time: Leading the Future with Deep Tech & IP」にパネリストとして登壇しています。
そこで語られたのは、機体の性能だけではありませんでした。
報告会で戸谷さんが紹介したプレゼンテーションは、愛知のものづくりの歴史を遡るところから始まります。からくり人形、自動車産業、ロボティクス、大学の研究、そして現在のスタートアップへ。Prodroneのドローンを、その長い連続の中に置いていました。
WHAT THEY BROUGHT TO AUSTIN
PRODRONE RESCUEやGT-Mという機体と、
それを生み出した愛知のものづくりの文脈。
海外の展示会で日本企業を見るとき、来場者がその企業の地域的・産業的背景まで知っているとは限りません。Prodroneは「名古屋のドローン企業」という現在地点からさらに後ろへ遡り、なぜこの地域からこうした技術が出てくるのかまでを一つの話にしていました。
そして、現地で起きたことはブースの説明だけではありません。
戸谷さんは、日本にいると普段なかなか接点を持てなかったメディア関係者や経済団体の人とも、Austinで偶然つながったと話していました。
日本では別々の会社や業界にいる人たちが、SXSWの数日間だけは同じ街を歩いている。海外から来た参加者との出会いに加えて、日本から来た人同士の関係が組み替わることもあります。
CASE 02|Tetra Tokyoのブースには、招き猫とガチャと香水があった
Tetra Tokyoの市川さんにとって、2025年は初めてのSXSWではありません。
最初にAustinを訪れたのは2022年。まだ現在のプロダクト像が固まっていない段階でSXSWへ行き、現地で2人のメンターにアイデアを相談しました。その後、ものづくり補助金への申請・採択を経て開発を進め、SXSW Sydney 2023にも出展。さらにシリコンバレー、サンフランシスコ、上海など、複数の海外展示会を経験しています。
そして2025年3月、今度はAustinのSXSWに出展者として戻ってきました。
愛知県ブースで紹介したのは、AIとコミュニティを組み合わせ、各市場の文化に合わせた広告メッセージの生成を目指す「Tetra-X.ai」です。
興味深いのは、その見せ方でした。
市川さんがSXSW直後に公開した記録を見ると、ブースのモニターには日本的な映像を流し、招き猫を置き、108種類の日本の言葉を入れたBANDAIのガチャを用意しています。さらに台湾の調香師Dr. Hsuのブランド「Papillion Doux」の香水も紹介しました。
香りを試してもらうことから会話が始まり、そこから「文化ごとに伝わる表現を変える」という自社の仕事へ話をつなげる。ソフトウェアの画面を最初から見せるのとは、かなり違う入口です。
WHAT THEY BROUGHT TO AUSTIN
AIサービスの説明だけでなく、
招き猫、ガチャ、映像、香り。「日本」や「文化」を体験できる入口をつくった。
Austinの学生がブースに入ると、空気が変わった
Tetra Tokyoの展示には、もう一つ特徴がありました。Austinの学生たちがブース運営に加わっていたことです。
市川さんは報告会で、現地でのコミュニケーションについてこう振り返っています。
「やっぱりアメリカの人には、アメリカの人が説明する方が伝わる」
— Tetra Tokyo株式会社 市川俊之さん
市川さん自身のSXSW後の記録では、さらに「ファウンダーの自分より現地の学生の方が話しかけやすそうだった」と振り返っています。
これは単なる英語力の話とも少し違います。誰がブースに立つかによって、近づきやすさや会話の始まり方まで変わる。現地の学生が入ったことで、展示物だけでなくブースそのものの雰囲気が変わったことが、市川さんの記録から読み取れます。
また、過去にTechCrunch Disruptで知り合った人物とSXSWで再会するなど、以前の海外出展でできた関係もAustinへ続いていました。
報告会で2人が話していたのは、「次にやりたいこと」だった
2025年4月9日の名古屋報告会は、SXSWから帰国して約1カ月後に開かれました。
そこで印象的だったのは、2人とも現地で起きたことを成果として整理して終わっていなかったことです。
Prodroneの戸谷さんが話していたのは、次は実際に自社のドローンを飛ばして見せたい、ということでした。
Tetra Tokyoの市川さんからは、ピッチへの挑戦や、さらに現地へ入り込んだマーケティングを試したいという話が出ました。
初めて行く前には想像できなかった「次」が、Austinを経験したあとにはかなり具体的な形になっている。その変化は2社に共通していました。
そして、2025年の出展のあと
報告会から時間が経った今、それぞれのその後も少し見えてきています。
ProdroneはSXSWの約3カ月後、フランスのVIVA TECHNOLOGY 2025、続いてParis Air Show 2025にも愛知県ブースから出展。SXSWでも紹介したGT-Mを、今度は欧州のテックイベント、航空宇宙産業の場へ持っていきました。
Tetra Tokyoでは、SXSW 2025終了後の2025年3月31日にTetra-X.aiの日本での特許登録を発表。同年8月には香港法人を設立し、2026年1月には米国シリコンバレーを拠点とするJapan Innovation Campusの第4期メンバーに採択されています。
もちろん、これらすべてをSXSW出展の直接的な成果として結びつけることはできません。
ただ、2025年4月の報告会で聞いた「次はこうしたい」という話のあとにも、2社の海外での動きが続いていることは確認できます。
ONE YEAR IN CONTEXT
2025年3月のAustinは、2社にとって海外展開の完成地点ではなく、
それまでの活動と、その後の活動が交差した一地点だった。
同じSXSWに出展しても、持ち帰るものは違う
ProdroneとTetra Tokyoは、同じ年、同じ愛知県ブースに参加していました。
それでも、Austinで起きていたことはかなり違います。
Prodroneは、災害対応ドローンという具体的な技術を持ち込みながら、その背後にある愛知の産業やものづくりの歴史までを海外の参加者へ見せました。そして日本では接点のなかった人とも、Austinでつながりました。
Tetra Tokyoは、AIサービスを説明するために、日本文化や香りといった一見プロダクトから遠いものをブースに持ち込みました。現地の学生と一緒に運営し、以前の海外イベントで生まれた関係とも再会しました。
「SXSWに出展すると何が得られるのか」に、一つの答えがあるわけではなさそうです。
むしろ2社を並べて見えてくるのは、企業がAustinへ何を持っていくかによって、そこで始まる会話も、出会う人も、帰国後に見える次の一手も変わってくることです。
2025年4月の名古屋で聞いた2つの報告は、その違いがよく見えるケースでした。



