京都のスタートアップがSXSWへ。Austinで「Kyoto」はどう見えた?

SXSW JAPAN CASE STUDY|STARTUPS FROM KYOTO

2025年3月、京都から複数の企業・スタートアップがSXSWへ参加しました。風を測る技術、ウェアラブル、AIナビゲーション、通信技術。それぞれ異なる事業をAustinへ持っていく中で、意外な共通点もありました。企業名を知らない相手でも、「Kyoto」には反応したのです。

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この記事は、2025年4月8日に京都・KOINで開催した「SXSW 2025報告会@京都」でのパネルセッションをもとに再編集しています。

登壇したのは、ミツフジ株式会社、メトロウェザー株式会社、Tomorrow Never Knows、コネクトフリー株式会社、京都府。SXSW 2025でそれぞれ何を持ち込み、Austinでどんな反応があり、その後に何が続いたのかを振り返ります。

SXSW 2025のCreative Industries Expoには、「KYOTO JAPAN」のブースがありました。

そこに並んだのは、いわゆる「京都らしい商品」ばかりではありません。

ウェアラブル、生体データ、風況観測、AIナビゲーション、通信技術。京都府から参加した企業・スタートアップは、それぞれかなり異なる領域の技術やサービスを持ってAustinへ来ていました。

そして帰国後の報告会で何度か出てきたのが、技術そのものとは別の話でした。

「京都から来た」と言うと、相手が反応する。

企業の名前をまだ知らなくても、「Kyoto」は知っている。そこから会社やプロダクトの話へ入っていける。

日本にいると当たり前すぎて意識しにくい地名が、Austinでは企業を知ってもらう最初の接点になっていました。

「風を視る」技術を、違う分野の人が見る

京都府宇治市に本社を置くメトロウェザーがSXSWへ持ち込んだのは、「風を視る」ためのドップラーライダーです。

レーザーを使って離れた場所の風向や風速を測る技術で、航空、風力発電、ドローンなど、風の状態が重要になる領域で活用されています。

SXSWでこの技術を見たのは、そうした分野の専門家ばかりではありませんでした。

メディア、学生、クリエイター、異なる業界の企業。普段なら同じ専門展示会には集まらない人たちもブースを訪れます。

報告会でメトロウェザーの宮本さんが振り返っていたのは、その人たちとの会話でした。

「自分たちでは考えつかなかった“風の使い道”が、現地の人たちとの会話で見えてきた」

— メトロウェザー株式会社 宮本さん

同じ技術でも、見る人が変われば「何に使える技術なのか」の答えが変わります。

SXSWでメトロウェザーが出会ったのは、既存市場の顧客候補だけではなく、風というデータを別の前提から見る人たちでもありました。

Austinの街そのものを使ったtimespace

Tomorrow Never Knowsが持ち込んだのは、AIナビゲーションアプリ「timespace」でした。

ユーザーの好みや、そのとき使える時間などから、次に行く場所や体験を提案するサービスです。

SXSWでは、展示ブースの中だけでデモを見せたわけではありません。

Austinの飲食店やスポットなど約2,000件のPOIを用意し、実際にSXSWで街を歩く人が使える形で試しました。

つまり、Austinそのものがプロダクトを試す場所になっていました。

「この技術をどう説明するか」だけではなく、知らない街で使ったとき、本当に次の行動につながるのか。どんな場所を提案すると人が反応するのか。

移動を扱うサービスだからこそ、街の外に持ち出したことで見えるものがありました。

TIMESPACE IN AUSTIN

京都で生まれたAIナビを、Austinの約2,000件の場所につなぐ。
SXSWでは、展示会場の外側までプロダクトを持ち出していた。

ミツフジ、コネクトフリー。それぞれ違う京都を持ってきた

同じ「KYOTO JAPAN」の中でも、企業が持ってきたものはかなり違いました。

ミツフジは、着用することで生体データを取得するウェアラブル技術。

コネクトフリーは、通信インフラそのものを問い直す技術と構想。

メトロウェザーの風況観測とも、timespaceのAIナビゲーションとも違います。

「京都企業」と聞いて、伝統工芸や観光に近いものを想像していた人には、むしろこのばらつきの方が意外だったかもしれません。

長い歴史を持つ製造業があり、大学や研究機関があり、そこからディープテックや新しいサービスが生まれている。

SXSW 2025では、京都府も公式ステージでDeep TechとIPをテーマにしたセッションを開催しました。

「Kyoto」という名前の下に複数の企業が並んだことで、観光地として知られる京都とは少し違う断面もAustinに現れていました。

それでも最初に反応されたのは、「Kyoto」だった

技術も事業も違う一方で、報告会では複数の登壇者から共通する経験が語られました。

「京都の企業です」「京都から来ました」と伝えたとき、相手が反応する。

会社名を知らない相手でも、Kyotoという地名なら知っていることがあります。

そこから「何をしている会社なのか」という次の会話へ進んでいく。

興味深いのは、そのとき相手が知っている「Kyoto」と、企業が実際に持ってきたものの間に距離があることです。

歴史都市として知られる京都から、ウェアラブルやドップラーライダー、AIナビゲーション、通信技術が出てくる。

その意外性も含めて、Kyotoが会話の入口になっていました。

KYOTO IN AUSTIN

企業名を知らなくても、「Kyoto」は知っている。
そこから、まだ知られていない企業や技術の話が始まった。

SXSWのあと、timespaceは会社になった

2025年4月の京都報告会から時間を進めると、SXSWへ持ち込まれたプロジェクトがその後どう動いたのかも見えてきます。

Tomorrow Never KnowsのプロジェクトとしてAustinで試されたtimespaceは、2025年6月に渋谷版のベータ版をローンチしました。

そして同年9月にはプロジェクトからスピンアウトし、新しい法人として株式会社timespaceが設立されています。

SXSWへの出展だけがその理由だった、という話ではありません。

ただ、京都で開発していたサービスをAustinという別の都市へ持ち出し、現地の約2,000件の場所と接続して試した経験は、timespaceがその後も都市を変えながら展開していく過程の一つになりました。

メトロウェザーもSXSW後、国内外の展示会への出展や実証を続けています。

2025年3月にAustinで聞いた反応だけで、それぞれの事業の行方が決まったわけではありません。

むしろ、その時点ではまだ途中にあった企業やプロジェクトを、海外の別の場所へ一度置いてみた。その断面がSXSW 2025でした。

海外から見ると、「京都」の中身も変わって見える

京都にいると、ミツフジもメトロウェザーもTomorrow Never Knowsもコネクトフリーも、それぞれ別の会社です。

扱う技術も、顧客も、事業のステージも違います。

ところがAustinでは、それらが「KYOTO JAPAN」という一つの場所に並びました。

外から見ることで、普段は別々に存在している企業の間に、初めて共通する文脈が生まれることがあります。

同時に、海外の人が持っている「Kyoto」のイメージと、実際にそこから生まれている技術との違いも見えてきます。

2025年の京都チームのSXSW参加で面白かったのは、京都という名前を世界へ宣伝できたことだけではありません。

Austinへ持っていったことで、自分たち自身も「京都から何が生まれているのか」を別の角度から見ることになった。

4月の報告会には、そんな経験がいくつも残っていました。