ROAD to SXSW Vol.50 アーカイブ記事
挑戦したMyEndoscope伊藤守さんと、挑戦者の渡航を支えるZIPAIR。それぞれから見えた海外Pitchの現場
9月3日、Venture Café Tokyoで「海外ピッチに挑戦すると、何が変わるのか?」というパネルセッションを開催しました。登壇者は、2025年のSXSW PitchでStudent Startups部門のファイナリストに選ばれたMyEndoscopeの伊藤守さんと、SXSW Pitchファイナリストの渡航支援に取り組むZIPAIRの関克哉さんです。
SXSW Pitchは、2009年から始まったSXSWで毎年開催されるスタートアップ向けのピッチコンペティション。選考を通過したファイナリストがAustinのステージで事業をプレゼンし、審査員とのQ&Aに臨みます。
2025年、私は会場の後ろから伊藤さんのPitchを見ていました。今回は、その壇上に立つまでに実際に何があったのか。そして、その渡航を支えた側は何を考えていたのか。二つの立場から聞いてみました。
「なるべくバッターボックスに立ちたい」
伊藤さんは普段、食道がんや胃がん、大腸がんなどの内視鏡治療に携わる医師です。
MyEndoscopeで開発しているのは、VRと内視鏡型コントローラーを使ったトレーニングシステム。日本で発展してきた内視鏡治療を、海外でも学べる環境をつくろうとしています。
SXSW Pitchへの応募につながったのは、東京大学からSXSWへの挑戦を支援する「Todai to Texas」でした。応募を提案されたとき、伊藤さんは「ぜひやってみたい」と思ったそうです。
「なるべくバッターボックスに立ちたい。どんなチャンスでも、なるべくどんどん出ていきたい」
応募書類では、SXSW Pitchが公開している評価基準を読み込み、自分たちの強みをどう伝えるかを整理。選考を経て、MyEndoscopeはStudent Startups部門のファイナリストに選ばれました。しかし、準備はそこからが本番でした。
深夜3時のメンタリングから、Austinの本番へ
ファイナリストになると、SXSW側によるメンタリングが始まります。
「11時ぐらいまでいて、家に帰って、3時に起きてログインして臨みました(伊藤さん)」
英語表現へのアドバイスだけでなく、「もっとストーリーを変えよう」と言われることもあり、そのたびにピッチを修正したそうです。しかもメンタリングはアメリカ時間で実施されます。
Austinに到着してからも、チームで滞在するAirbnbで直前まで構成を変更し、練習を続けました。本番前日のリハーサルでは、疲れや時差ボケも重なり、途中で言葉が出なくなる場面もあったそうです。
それでも翌日は、
「ここまで来たら、もう本当に堂々とするしかない」とステージへ。
3分間のPitchの後には、厳しいQ&Aが待っています。
「実際の内視鏡をどの程度再現できるのか」「どれくらいコストを下げられるのか」「どう導入するのか」。
技術そのものだけでなく、事業としてどう実装するのかまで、その場で答える必要がありました。結果はWinnerではありませんでした。
それでも伊藤さんは、
「やっぱり登壇したっていうのは、本当に良かった」と振り返ります。
他のファイナリストや審査員との接点が生まれ、出資の話や、アメリカの病院を紹介する話にもつながりました。
「僕らもあんまりよくわからないまま行って、見えてきたものっていうのがある」
行く前には分からなかったことが、実際にその場へ立ったことで見えてきた。伊藤さんにとっては、「今後やりたいことの解像度が上がる経験」になったそうです。
✈️ その人を、どうやってAustinまで送り出す?
もう一人の登壇者、ZIPAIRの関克哉さんには、挑戦を支える側の話を聞きました。
関さんの話で印象的だったのは、ZIPAIRにとって「海外へ行きたい人を支援すること」が、単発の社会貢献活動ではなく、そもそもの事業の考え方とつながっていることでした。
ZIPAIRが設立された背景には、
「もっと航空運賃のハードルを下げていかないといけない」
という課題意識があったといいます。
海外へ行く目的は、人によって違います。仕事、留学、スポーツ、研究、スタートアップのPitch。そこで必要なのは、必ずしも豪華な機内体験ではありません。
関さんは、目的地へ移動するための基本運賃をできるだけ抑え、必要なサービスはそれぞれが追加するというZIPAIRのモデルについて説明した上で、
「若い方々がどんどん海外に行く時に、価格がどうしてもハードルになるので、そういったところを支援したい」と話しました。
さらに、
「行ってみると、やっぱり何か生まれるものが非常に多くあると思うので、とりあえず行ってみる。そういったところを背中を押したい」とも語っています。
この考え方は、ZIPAIRとSXSW Japanとの取り組みにも具体的に表れています。
2025年のSXSW Pitchでは、MyEndoscopeのチームにもZIPAIRによる渡航支援が行われました。ファイナリストに選ばれたチームが、実際にAustinの舞台へ向かうための移動を支える取り組みです。
SXSWへの参加には、バッジ代、宿泊費、現地交通費、そして航空券が必要です。海外へ出る意思があっても、最後に「費用」が現実的な壁になります。
ZIPAIRがSXSW Japanコミュニティを支援する理由は、
「行ってみたい」を、実際に行ける選択肢へ少し近づけること。
ZIPAIRとは
ZIPAIRは、日本航空株式会社の 100%出資によって設立された、日本初の中長距離国際線 LCC(格安航空会社)です。成田からソウル、バンコク、シンガポール、ホノルル、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼ、ヒューストン、バンクーバーへの各路線を運航しており、10月に新たにクアラルンプールへ就航予定です。これまでのフルサービスキャリアでも、ローコストキャリアでもない、新しい基準を作る、「NEW BASIC AIRLINE」として、フライトの体感時間を短くするエアラインを目指しています。
NEXT STEP
SXSW 2027へ参加を検討している方へ
SXSW Japanでは、ZIPAIRと連携したSXSW 2027参加者向けの情報をご案内しています。オースティンへの渡航を含め、参加準備を進める方はこちらをご覧ください。
ROAD to SXSW Vol.50
2026年9月16日発行



