SXSW PITCH WATCH #03|次に仕事で聞くスタートアップ
売れ残った商品は、なぜ簡単に安売りや寄付ができないのか。Sotiraは企業の余剰在庫を、二次流通の買い手や非営利団体につなぐ米国のスタートアップです。SXSW Pitch 2026で2つの賞を受賞した同社の仕組みと、その後の動きを追います。
「SXSW PITCH WATCH」は、SXSW Pitchに選ばれたスタートアップが、その後どのように事業を進めているのかを追うシリーズです。選出時に発表した技術や製品と、その後に確認できた取り組みを比較しながら、FuturistでありSXSW Japan代表の宮川の視点から紹介します。
STARTUP GUIDE
Sotiraとは?
まだ飲める飲料や、販売できる化粧品が倉庫に残っている。商品に問題がなくても、企業がその在庫を別の場所へ動かすには、価格や販路、物流、期限を考える必要があります。
Sotira
ソティラ/米国・サンフランシスコ(2024年創業)
Amrita BhasinとGary Kwongが創業。小売店、メーカー、ブランドなどが抱える余剰在庫を、二次流通での売却や非営利団体への寄付につなぐサービスを提供しています。
Sotiraが扱うのは、商品そのものの製造や販売促進ではありません。通常の販売ルートで売り切れなかった在庫を、企業が管理しながら別の行き先へ流通させるための仕事です。
売れ残り商品を、なぜ簡単に安売りできないのか
例えば、飲料メーカーが想定より多くの商品を製造した場合。倉庫に保管し続ければ費用がかかり、賞味期限が近づけば販売できる時間も短くなります。
かといって、どこにでも大幅値引きで流せるわけではありません。ブランド側にとっては、どの取引先へ、いくらで、どのように販売されるかも重要です。意図しない販路への流出は、既存の販売チャネルや価格戦略に影響する可能性があります。
寄付する場合も、受入先の条件を確認し、輸送を手配し、必要な記録を残す仕事があります。Sotiraは、こうした売却・寄付に伴う実務を支援します。
二次流通の買い手と、余剰在庫をつなぐ
Sotiraの二次流通サービスでは、商品を保有する企業が余剰在庫を提示し、買い手との取引を進めます。企業が在庫の処分方法を管理しながら、通常の販売チャネルとは別の行き先を探せる点を訴求しています。
対象となるのは、食品・飲料、化粧品、健康関連商品などのまとまった在庫です。個人間のフリマアプリとは異なり、企業が大量の商品を動かす業務を想定しています。
寄付先を探し、輸送や書類の手配まで支援する
売れ残った商品を寄付したくても、受け取ってくれる団体がすぐに見つかるとは限りません。大量の商品を保管できる場所があるか、賞味期限までに届けられるかなど、確認しなければならないことがあります。
Sotiraは、商品の種類や数量、保管場所などの条件から、受け入れ可能な非営利団体を探す仕組みを提供しています。公式サイトによると、このマッチングにはAIも活用されています。
さらに、寄付先との調整や輸送の手配、必要な書類の作成まで支援します。企業が個別に寄付先を探し、配送や事務手続きを進める負担を減らそうとしているのです。
16,000ケースの飲料を、1週間以内に再流通
実際に、どれくらいの規模の商品を扱っているのでしょうか。
Sotiraが紹介している飲料ブランドTruの事例では、16,000ケース、トラック4台分に相当する余剰在庫を、1週間以内に処理したといいます。
同じく飲料ブランドのAura Boraでも、20万点以上の商品を1週間以内に再流通させた事例が紹介されています。
大量の在庫を抱える企業にとって、買い手を探すだけでなく、短期間で商品を移動させられることも、Sotiraが提供する価値の一つです。
SXSW VIEW
SXSW Pitch 2026で部門賞とBest in Showを受賞
Sotiraは2026年3月のSXSW Pitchで、Sustainability, AgTech & Food部門の受賞企業に選ばれました。さらに、部門横断の特別賞「Best in Show」も受賞しています。
SXSW Pitchは、世界各地のスタートアップが新しい製品や事業を発表するピッチコンペティションです。2026年には45社がファイナリストに選ばれ、Sotiraはその中から2つの賞を獲得しました。
SXSW PITCH 2026
Sotira — Category Winner / Best in Show
食品ロスや廃棄物削減というと、まだ食べられる商品が捨てられてしまうことを想像するかもしれません。
しかし、企業が大量の在庫を抱えたときには、商品を必要とする相手がいても、すぐに届けられるとは限りません。既存の販売価格や取引先への影響を考えながら買い手を探し、輸送を手配する必要があります。
Sotiraは、そうした企業側の事情を踏まえ、売却先や寄付先を探すところから、実際に商品を動かすところまでを支援しています。
受賞後の動き
2026年6月には、共同創業者兼CEOのAmrita Bhasinが、米国のAspen Ideas FestivalのFellowsに選ばれました。
また、Sotiraは現在、余剰在庫の売却だけでなく、非営利団体への寄付を支援するサービスも展開しています。商品と寄付先の条件を照合するAIマッチングや、輸送・書類管理など、企業が在庫を手放すまでの手続きをまとめて扱っています。
売却と寄付の両方を支援する事業は、SXSW Pitchへの選出時点ですでに紹介されていました。現在のサービスでは、寄付先とのマッチングや物流支援の具体的な仕組みが説明されています。

宮川麻衣子
Futurist / SXSW Japan 代表
2012年よりSXSWに継続参加
Futurist Perspective
Sotiraについて興味深いのは、商品が余っているという事実だけでなく、その商品を別の場所へ動かすための判断や手続きに着目している点です。
まだ使える商品でも、価格、ブランド、輸送、期限、受入条件などを調整しなければ、必要とする相手へ届けられません。寄付先のマッチングにAIを使う試みでは、どの条件を機械が照合でき、どこに人の判断が必要なのかも気になります。
実際にどれだけの在庫が再流通し、廃棄を減らせたのか。今後は、企業公表の事例だけでなく、継続的な取引成果を示すデータにも注目したいと思います。
STARTUP TIMELINE
Sotiraは、SXSW Pitch選出前後にこう進んでいる
2024年
Amrita BhasinとGary KwongがSotiraを創業。
2025年
ShoptalkおよびReverse Logistics Association関連のピッチコンペで受賞。
2025年6月
200万ドルの資金調達を発表。SXSW Pitch受賞前の実績。
2026年3月
SXSW Pitch 2026のSustainability, AgTech & Food部門賞とBest in Showを受賞。
2026年6月
共同創業者兼CEOのAmrita BhasinがAspen Ideas Festival Fellowに選出。
2026年10月時点
売却・寄付支援サービスを公式サイトで案内。受賞後の取引拡大や新規調達は引き続き検証が必要。
DISCOVER SXSW PITCH
世界のスタートアップが集まる、SXSW Pitchとは?
SXSW Pitchは、世界各地のスタートアップが新しい技術や事業を発表する、SXSWのピッチコンペティションです。どんな企業が選ばれ、何が発表されているのか。SXSW Japanでは、その仕組みや参加方法を日本語で紹介しています。
日本からSXSWへ。ZIPAIRの渡航支援
SXSW 2027に向けた対象者への渡航支援プログラムも紹介しています。年度や対象条件はリンク先でご確認ください。


