SXSW PITCH WATCH #01|次に仕事で聞くスタートアップ
試合の動きを、指先で感じる。OneCourtは、スポーツのリアルタイムデータを振動と音に変え、視覚障害のあるファンが試合を楽しめる端末を開発しています。SXSW Pitch 2026でカテゴリ賞を受賞した同社は、家庭向けの展開も進めています。
「SXSW PITCH WATCH」は、SXSW Pitchに選ばれたスタートアップが、その後どのように事業を進めているのかを追うシリーズです。選出時に発表した技術や製品と、その後に確認できた取り組みを比較しながら、FuturistでありSXSW Japan代表の宮川の視点から紹介します。
STARTUP GUIDE
OneCourtとは?
スポーツの試合を観戦するとき、私たちは通常、映像を見たり、実況を聞いたりして、選手やボールの動きを追います。では、その動きを「触る」ことができたらどうでしょうか。
OneCourt
ワンコート/アメリカ・シアトル(2021年創業)
スポーツの試合データを振動と音に変換し、視覚障害のあるファンが試合の展開を触覚で追えるようにするスタートアップです。
OneCourtが開発するのは、手で触れて使う触覚端末です。試合中の選手やボールの動きなどをリアルタイムデータから取得し、端末上の振動として伝えます。音声による情報も組み合わせることで、視覚に頼らず試合の状況を把握できるようにしています。
たとえばバスケットボールなら、コート上でボールがどちらに動いているのか。野球なら、投球やプレーがどう進んでいるのか。テレビ画面に映る動きを、指先で追うという発想です。
どんな課題から生まれた技術?
視覚障害のあるスポーツファンも、ラジオ実況や音声解説を通じて試合を楽しんできました。ただ、実況が伝えるのは、言葉にされた情報です。コートやフィールドのどこで何が起きているのかを、空間的に把握するには限界があります。
OneCourtは、試合の位置情報や動きを触覚で伝えることで、実況を聞くだけでは得にくかった情報を補おうとしています。端末に触れることで、試合の流れを自分のペースで追える。音声だけに依存しない、新しい観戦方法をつくろうとしている企業です。
SXSW以前から、NBAと技術開発を進めていた
OneCourtは、SXSW Pitch 2026で初めて注目された企業ではありません。2025年2月、NBAは新しい技術を試験・開発するプログラム「NBA Launchpad」の第4期参加企業としてOneCourtを選出しました。
NBAの公式発表では、OneCourtを、試合の動きを触覚と生成音声に変換し、視覚障害のあるファンにリアルタイムの観戦体験を提供する技術として紹介しています。NBA Launchpadでは、選出企業がNBAやWNBAの支援を受けながら技術を検証します。つまりOneCourtは、SXSWに登場する以前から、プロスポーツの現場で技術を試す段階に進んでいました。
受賞後、家庭で使う製品へ
2026年5月、OneCourtは視覚障害者の権利擁護団体American Council of the Blind(ACB)との提携を発表しました。発表されたのは、ACB会員がOneCourtの触覚端末を、自宅や外出先で利用するための特別オファーです。
家庭向けのサービスは、端末、スマートフォンアプリ、そして試合データにアクセスする「All-Access」サブスクリプションで構成されています。対象として案内されているのは、NFL、NBA、MLBの試合です。
会場に設置された端末を使う体験から、ファンが自分の端末で試合を楽しむサービスへ。OneCourtの事業が広がろうとしていることがわかります。ただし、一般利用者への端末配送がどこまで完了したか、実際に何人が利用しているかまでは、今回確認できた発表だけでは判断できません。
SXSW VIEW
SXSW Pitch 2026では、スポーツ体験を変える技術として受賞
OneCourtは2026年3月、SXSW Pitchの「Entertainment, Media, Sports & Creator Content」カテゴリで優勝しました。
SXSW PITCH 2026
OneCourt — Category Winner
SXSW Pitchは、スタートアップが自社の技術や事業を発表するコンペティションです。このカテゴリには、スポーツ、メディア、エンターテインメント、コンテンツ制作などの新しい技術が集まります。OneCourtの特徴は、スポーツ中継の情報を従来とは異なる感覚で受け取れるようにしていることです。
SXSW 2026では、スポーツ観戦の体験そのものも議論されていた
SXSW 2026 SESSION
このセッションでは、リアルタイムデータ、空間的な体験、AIなどの技術を使い、スポーツファンに試合の魅力をどう届けるかが議論されました。OneCourtが紹介されたという確認はできませんが、スポーツの情報をどのような体験に変換して届けるかという点で共通するテーマがあります。

宮川麻衣子
Futurist / SXSW Japan 代表
2012年よりSXSWに継続参加
Futurist Perspective
触覚でスポーツ観戦ができるというのは、これまで「見る」「聞く」が中心だった「観戦」の枠を超えていて、面白いと思いました。
スポーツの試合を「指先で追う」という発想は、あまりしたことがありませんでした。
もちろん、OneCourtは視覚障害のあるファンのために開発された技術です。でも、試合の動きを振動に変えてみると、そもそも私たちはスポーツの何を感じながら観戦しているんだろう、とも思います。
ボールの位置、選手の動き、プレーの速さ。普段は目で追っている情報を、手で受け取る。実際に触ってみたら、いつものスポーツ観戦とは違う感覚がありそうです。
STARTUP TIMELINE
OneCourtは、SXSW Pitch選出前後にこう進んでいる
2021年
アメリカ・シアトルでOneCourtを創業。触覚スポーツ中継技術の開発を始める。
2025年2月
NBA Launchpad第4期参加企業に選出。
2026年3月
SXSW Pitch 2026の「Entertainment, Media, Sports & Creator Content」カテゴリで優勝。
2026年5月
American Council of the Blindとの提携を発表。家庭や外出先での利用に向けた会員向けオファーを案内。
2026年10月現在
家庭向け端末・アプリ・サブスクリプションの展開を進めている。一般利用者への配送状況や利用規模は追加確認が必要。
次に読むなら
SXSW Pitchの応募条件、カテゴリ、審査についてまとめた記事です。OneCourtのような企業が、どのようなコンペティションで選ばれているのかを知りたい方へ。
