700人から始まったSXSWは、なぜ40年続くイベントになったのか

SXSW

PERSPECTIVE|HOW SXSW WORKS|1987—2026

1987年、150人ほどの参加を想定して始まったSXSWには、初日だけで700人が集まりました。それから約40年。同じAustinで毎年開催されながら、SXSWは何度も姿を変えてきました。長く続いているのに、毎年同じではない。そのことが、何度もこの街へ戻りたくなる理由の一つなのかもしれません。

宮川麻衣子

宮川 麻衣子|Maiko Miyagawa

Director of SXSW Japan / Futurist
SXSWを2012年から継続して観測

1987年、150人のつもりが700人集まった

SXSWが始まったのは1987年です。

その前年、Austin Chronicleのオフィスに集まった小さなグループが話していたのは、Austinにいる音楽やクリエイティブの才能が、街の外から十分に知られていないということでした。

そこで考えたのが、Austinから世界へ売り込みに行くのではなく、外の世界をAustinへ連れてくるイベントでした。

最初のSXSWは150人ほどの登録を見込んでいました。

ところが1987年3月、初日には700人が集まりました。Music Festivalには177組のアーティストが出演し、15のステージが使われています。

1987

150人を想定していた初回に700人が参加。177組のアーティスト、15ステージからSXSWが始まった。

現在のSXSWとは、規模もプログラムもまったく違います。

でも、「世界をAustinへ連れてくる」という最初の構造は、約40年後のSXSWにもかなり残っています。

Musicの祭典に、FilmとInteractiveを入れた

最初の7年間、SXSWは着実に成長していきました。

そして1994年、大きな変化が起きます。

Musicを中心に始まったイベントに、FilmとInteractiveが加わりました。

SXSW自身も、この1994年を「世界からSXSWがどう見られるかを変えた」大きな転換として振り返っています。

インターネットが社会を大きく変え始める時期に、デジタルのコミュニティがSXSWの中へ入ってきました。

ここで興味深いのは、Music Festivalをそのまま大きくしていったわけではないことです。

音楽の隣に、映画を置く。さらにInteractiveを置く。

違う文化を一つのイベントの中に入れたことで、SXSWそのものの意味が変わっていきました。

1994

FilmとInteractiveが加わり、Musicだけでは説明できないイベントへ。

同じAustinへ毎年戻る。でも、同じSXSWは一度もない

私が初めてSXSWへ参加したのは2012年です。

それから毎年のように見ていると、大枠はそれほど変わっていないようにも見えます。

Musicがあり、Film & TVがあり、テクノロジーについて話すConferenceがある。Austinの街にさまざまなVenueがあり、そこでセッション、上映、ライブ、展示、企業のHouseなどが同時に動いています。

でも、中に入ってみると毎年かなり違います。

特にわかりやすいのが、その年に会場を覆っているテーマです。

新しいテクノロジーそのものへの期待が強く、次々と登場するサービスやデバイスによって「世界がどう変わるのか」が盛んに語られていた年もありました。

ところが、その数年後には空気が反転することがあります。

テクノロジーが社会へ広がったからこそ、その負の側面や責任が議論される。「何がつくれるか」だけでなく、「何をつくるべきなのか」「人間にとって良いテクノロジーとは何か」という、いわばテクノロジーの良心のような話が注目されることもありました。

SXSWには、毎年一つの公式テーマが設定されているわけではありません。

それでも大量のセッション、作品、展示、プロダクトを横断していると、その年に多くの人が期待しているものや、逆に不安に思い始めていることが、いつの間にか一つの空気として立ち上がってきます。

FROM MY OBSERVATION

SXSWには毎年一つの公式テーマがあるわけではない。でも、歩いていると「今年はこの話をしている」と感じる瞬間があります。

私は、その年の空気を探すことも毎年Austinへ行く楽しみの一つになっています。

人が集まる場所にも、波がある

SXSWの歴史を振り返ると、イベント内部の境界も少しずつ変わっています。

2012年には、Interactive、Film、MusicのBadgeをまたいで参加できるConvergence Programmingが正式に加わりました。

さらに2017年には、それまでの区分を横断する24トラックのUnified Conferenceへ移行しています。

現在もSXSWは、異なる領域と人が交わる「Convergence」をイベントの特徴として掲げています。

実際に長く参加していると、それぞれの部門に人が集まる「波」があるように感じます。

ある時期にはInteractiveの熱が大きくなり、別の時期にはStartupが目立つ。Film & TV、Music、AI、Brand Experienceなど、時代によって人が集まる場所が少しずつ動いていきます。

Venueも同じです。

基本的な街の構造は変わらなくても、毎年違う建物に入り、違うHouseが現れ、違うコンテンツに出会います。

だから14年通っていても、「去年見たものをもう一度見に行く」という感覚にはあまりなりません。

同じ街へ戻ってくることと、違うものに出会うことが同時にある。

これは長く参加していても飽きない理由の一つだと思います。

sxsw 2025

毎年Austinで会う人ができる

そして、毎年開催されることには、コンテンツとは別の意味もあります。

何年も通っていると、「今年は誰が登壇するのか」「何を見るのか」だけではなく、Austinへ行けば会える人が少しずつ増えていきます。

普段は別の都市や国で仕事をしている人と、なぜか毎年3月になるとAustinで会う。

前年のSXSWから一年の間に何をしていたのかを話し、また次の年に会う。

一回のイベントで大量の名刺を交換する「ネットワーキング」とは、少し違います。

イベントそのものが毎年繰り返されることで、人間関係にも時間が積み重なっていきます。

SXSW公式は現在も、イベントの目的を「creative peopleが目標を達成することを支える」と表現し、異なる領域の人が出会うことを大きな特徴としています。

でも、14年間通っている私にとって、その「出会う」は一度きりではなくなっています。

また会う。さらに翌年も会う。

イベントが長く続くということは、そこに参加する人たちの関係にも「続き」が生まれることなのだと思います。

40周年、中心だったConvention Centerがなくなった

そして2026年、SXSWは40周年を迎えました。

ところが、その年に長年SXSWの中心だったAustin Convention Centerはありませんでした。

建て替えのために閉鎖され、Conferenceや展示などはDowntownのホテル、劇場、既存Venueへ分散しました。

40周年なのに、これまでの完成形を再現するのではなく、中心だった建物そのものがなくなる。

それでも街を歩けば、SXSWは成立していました。

むしろ複数のVenueへ分散したことで、以前からSXSWにあった「街の中を歩きながら違う世界を行き来する」という感覚が、より強く見えたようにも感じました。

長く続くイベントを考えるとき、つい「何を残すか」に目が向きます。

でも2026年のSXSWを見ていると、建物も、部門の境界も、プログラムも変えることができる。

では、何が残ればSXSWはSXSWなのでしょう。

Austin Convention Center跡地
Austin Convention Center跡地

変わるから、また戻ってこられる

1987年と2026年のSXSWは、見た目だけならほとんど別のイベントです。

Musicから始まったイベントにFilmとInteractiveが入り、スタートアップ、企業、国や地域など、さまざまな人たちがAustinへ集まるようになりました。

Conferenceの構造も、Venueも、その年に話題になるテーマも変わってきました。

それでも、最初にあった「世界をAustinへ連れてくる」という構造は、意外なほど残っています。

40年続くイベントというと、長く支持される定番コンテンツがあるように思います。

SXSWを長く見ていると、少し違います。

今年面白かったものが、来年も中心にあるとは限りません。テクノロジーへの期待が大きく膨らんだあとに、そのテクノロジーを疑う議論が中心になることもある。人が集まる部門も、Venueも、街に現れるコンテンツも変わっていきます。

それでも毎年3月になると、世界中から人がAustinへ戻ってきます。

私自身も、その一人になりました。

新しいものを見るためでもあるし、その年の空気を知るためでもある。そして、Austinへ行けば毎年会える人たちがいるからでもあります。

変わるから、また戻ってこられる。

同じ街に戻る。でも、そこで待っているものは毎年違う。そして戻ることを繰り返すうちに、そこに人との関係も積み重なっていく。

SXSWが約40年間つくってきたものは、巨大なイベントそのものだけではないのかもしれません。

世界中の人が、毎年戻ってこられる場所。

そう考えると、「なぜSXSWはAustinで続いているのか」という話も、イベントの運営だけでは説明できなくなってきます。

街の使い方、Venue、企業のHouse、運営する人たち、そして毎年戻ってくる参加者。

次は、そのSXSWを実際に支えている仕組みを、もう少し街の側から見てみたいと思います。

HOW SXSW WORKS

40年続くイベントを「つくる側」から見る

SXSWの歴史を追うと、プログラム、Venue、参加者、街との関係まで、大きく変わり続けていることがわかります。

SXSW Japanでは、大規模イベント、カンファレンス、MICE、地域イベントなどに関わる企業・自治体・団体向けに、SXSWの運営構造や街との関係を読み解く講演・ブリーフィングを行っています。

SXSW開催期間中には、通常のセッション視察とは少し違う、「イベントそのものを見る」ための現地視察についてもご相談いただけます。

SOURCES

SXSW, “History of SXSW”
SXSW, “About SXSW”
SXSW, “Unified Conference”
SXSW, “SXSW 2026 Season Launch”

文:宮川麻衣子 / Director of SXSW Japan / Futurist
2026年9月公開