SXSW KEYWORDS #05|次に仕事で聞く言葉
ルックス、睡眠、食物繊維、キャリア、さらには「不便」まで。最近のネットでは、何かを「よくする」だけでなく、「maxする(最大化する)」言い方が増えています。
「SXSW KEYWORDS」は、世界で使われ始めた新しい言葉を取り上げ、その意味と背景、SXSWで関連するテーマがどう語られていたかを短く紹介するシリーズです。まだ日本ではあまり聞かないけれど、意味を知ると「あ、それ最近あるかも」と思える言葉。そんな、これから仕事の中で耳にするかもしれないキーワードを、FuturistでありSXSW Japan代表の宮川の視点から追っていきます。
KEYWORD GUIDE
-maxxing(マキシング)とは?
Looksmaxxing、Sleepmaxxing、Fibermaxxing、Career maxxing、Friction-maxxing。前に付く言葉は違うのに、「もっと良くする」ではなく「最大化する」という言い方は共通しています。最近、何にでも -maxxing が付いていると思ったことはありませんか。
-maxxing
マキシング
「その対象をできるだけ最大化する、徹底的に最適化する」という意味を加えるネット由来の造語パターンです。
たとえば sleep + maxxing = sleepmaxxing なら睡眠をできるだけ最適化すること、fiber + maxxing = fibermaxxing なら食物繊維の摂取を増やすことを指します。
この記事では、単独の単語ではなく接尾辞のように使われることを示すため、-maxxing と先頭にハイフンを付けて表記します。実際の造語では looksmaxxing、sleepmaxxing のように続けて書かれることも、ハイフンやスペースを入れて書かれることもあります。
どこから来た言葉?
-maxxingの系譜をたどると、ひとつの流れとしてゲーム文化のmin-maxingに行き着きます。min-maxingは、ゲームやロールプレイングで、不要な能力を抑えながら必要な能力を最大化し、キャラクターを有利に組み立てる考え方です。
その後、オンラインのmanosphereやincelコミュニティでは、外見をできるだけ改善するlooksmaxxingが使われるようになりました。2024年の言語学研究では、このlooksmaxxingをひとつの原型として、さまざまな語に -maxx + -ing を付ける X-maxxing の造語パターンが広がったと分析されています。
ただし、「min-maxingからlooksmaxxingへ一直線に変化した」とまで確定しているわけではありません。現在確認できるのは、ゲームにある「能力値を最適化する」という語彙と、オンラインコミュニティで発達したlooksmaxxingの双方が、現在の-maxxing文化につながっているということです。
2020年代になると、この言い方は元のコミュニティや外見改善の文脈から離れ、睡眠、食事、お金、仕事、性格、健康などへ広がっていきました。Dictionary.comは2026年9月、maxxingを「何かを最大限まで行う、可能な限り最適化する」意味で、ほぼどんな言葉にも付けられる表現として紹介しています。
looksmaxxing — appearance
sleepmaxxing — sleep
fibermaxxing — dietary fiber
career maxxing — career
friction-maxxing — friction
見た目、睡眠、食事、キャリア、そして「摩擦」まで。前に何を置いても、「それを最大化する」という意味が通じます。
2026年9月に発表された研究では、この現象を個別の流行語の集合ではなく、「自己最適化を生み出す、プラットフォーム由来の文法」として捉えています。
面白いのは、何を改善するかではなく、何でも「改善」ではなく「最大化」の対象として名前を付けられることです。
こんな時に使える?!
-maxxingは、個別の行動を説明するだけでなく、「これも最大化の対象になっているな」と最近のトレンドをまとめて見る時にも使えます。
“We’re maxxing everything now—sleep, money, careers, even friction.”
「今は睡眠も、お金も、キャリアも、摩擦まで、何でもマキシングしていますね」
- 「ファイバーマキシングもスリープマキシングも、結局は同じ-maxxing文化なんですね」
「そう考えると、健康法そのものより、何でも最適化対象にする感覚の方が面白いかもしれません」
新しい造語を見た時も、語尾に-maxxingが付いていれば、初めて見る言葉でも大体の意味を推測できます。
日本ではどう広がっている?
日本では「-maxxing」という接尾辞そのものより、個別の造語が先に入ってきています。
2026年には、Forbes JAPANがルックスマキシング、スリープマキシング、マネーマキシングを並べて紹介し、さらに「エシックスマキシング」という新しい言葉を提案しています。
同じ年の夏には、雑誌『anan』がファイバーマキシングを腸活特集で紹介。リクルートワークス研究所は、AI時代にあえて不便を残すフリクション・マキシングを取り上げました。
つまり日本でも、外見やネットスラングの話だけではなく、食事、仕事、AI、倫理まで、別々の領域へ「マキシング」が広がり始めています。
SXSW VIEW
SXSW 2026にもあった「何でも最適化する」感覚
SXSW 2026では、-maxxingが表している「自分の一部を測り、改善し、さらに最適化する」という行動について、SXSWのHealthトラックにもはっきり現れていました。
SXSW 2026 SESSION
このセッションでは、サプリメント、ウェアラブル、AIによるヘルストラッキングなどを自分で組み合わせる「セルフディレクテッドな健康管理」が、ニッチなBiohackingから一般の生活へ広がっていることが議論されました。
SXSW 2026 SESSION
こちらでは、SNS上で広がるBiohackingを検証しながら、長寿、健康の最適化、アスリートのピークパフォーマンスまでが扱われています。
-maxxingというネットの言葉と、SXSWのHealthセッションで使われる「optimization」は同じものではありません。ただ、睡眠、栄養、身体、仕事などを、それぞれ測定し、改善可能なパーツとして扱う感覚は重なります。
さらに面白いのは、同じ2026年にFriction-maxxingまで登場したことです。効率化によって消してきた「不便」そのものまで最大化の対象になる。-maxxingは、最適化文化を表す言葉であると同時に、その文化への反応まで取り込める造語法になっています。

宮川麻衣子
Futurist
SXSW Japan 代表
2012年よりSXSWに継続参加
Futurist Perspective
Friction-maxxingを調べていたら、Sleepmaxxing、Fibermaxxing、Career maxxingと、何にでもmaxxingが付いていることに気づきました。
面白いのは、新しい行動が次々に生まれていること以上に、睡眠も食事も仕事も、すべて「最大化できる対象」として名前を付けていることです。
「もう少し良くする」ではなく「maxする」。その言い方自体に、今の自己管理や自己最適化の感覚がかなり出ていると思います。
KEYWORD TIMELINE
「-maxxing」はこのように広がってきた
ゲーム文化
min-maxingという言葉が、必要な能力を最大化し、不要な能力を抑えてキャラクターを最適化する考え方として使われる。
2010年代〜
オンラインのmanosphereやincelコミュニティで、外見を最大限に改善するlooksmaxxingが広がり、X-maxxing型の造語が増えていく。
2024年
言語学研究が、looksmaxxingを原型に、-maxx / -maxxingが新しい語を次々に作れる生産的な造語要素になっていると分析。
2025年
SleepmaxxingなどがTikTokの外へ広がり、National Geographicなど一般メディアでも健康・ウェルネストレンドとして紹介される。
2026年
Fibermaxxing、Career maxxing、Friction-maxxingなどが健康、仕事、生活へ広がる。日本でも複数の「○○マキシング」が一般誌やビジネスメディアに登場する。
2026年9月
Dictionary.comがmaxxingを独立したスラング項目として掲載。研究論文でも、-maxxingを個別の流行語ではなく「自己最適化の文法」として整理する試みが出る。
SOURCE
- Dictionary.com, “maxxing”
- Ewelina Prażmo, “Affixmaxxing or the emergence of new derivational affixes in online discourse: A construction morphology approach”
- Dag Øivind Madsen, “Maxxing Culture: A Preliminary Conceptual Mapping”
- National Geographic, “Sleepmaxxing is the newest wellness trend—but does it actually work?”
- UCLA Health, “Is ‘fibermaxxing’ a sound nutrition trend?”
- Forbes, “Why The Career ‘Maxxing’ Trend Is Everywhere In The Workplace”
- Forbes JAPAN, 「外見を磨く『ルックスマキシング』より、倫理を高める『エシックスマキシング』を」
- anan 2026年7月22日号, 「腸活“ファイバーマキシング”レシピ。」
- リクルートワークス研究所, 「過度のAI依存をやめ、『考える工程』をヒトに残す」
- SXSW 2026, “Are We All Biohackers Now?”
- SXSW 2026, “TikTok vs. Real Doc? Doctor Approved Biohacking Tips”



