SXSW KEYWORDS #04|次に仕事で聞く言葉
AIに聞けばすぐ答えが出る。食事はアプリで届く。道に迷うことも減った。便利さが増えるほど、考える、待つ、迷うといった工程まで消えていく。そこに、あえて少し「摩擦」を残そうとする言葉が出てきました。
「SXSW KEYWORDS」は、世界で使われ始めた新しい言葉を取り上げ、その意味と背景、SXSWで関連するテーマがどう語られていたかを短く紹介するシリーズです。まだ日本ではあまり聞かないけれど、意味を知ると「あ、それ最近あるかも」と思える言葉。そんな、これから仕事の中で耳にするかもしれないキーワードを、FuturistでありSXSW Japan代表の宮川の視点から追っていきます。
KEYWORD GUIDE
フリクション・マキシングとは?
AI要約だけを読まずに原文を読む。すぐChatGPTに聞かず、一度自分で考える。メールで済ませず直接話す。暇な時間をスマホで埋めない。便利なのに、あえて少し手間を残す。そんな行動を表す言葉が出てきました。
Friction-maxxing
フリクション・マキシング
便利さを最大化するのではなく、あえて少し手間や不便を残すことで、考える力や人との関係、経験そのものを取り戻そうとする考え方です。
ここでいう friction は、単なる「面倒」ではありません。何かを考えたり、人と関わったり、経験として記憶したりするために必要な摩擦まで、効率化によって消してしまわないようにする、という意味で使われています。
この言葉は、The Cutのコラムニスト Kathryn Jezer-Morton が2026年1月の記事 “In 2026, We Are Friction-Maxxing” で使ったことで広まりました。
スマホ、AI、配達サービスなどによって、退屈、気まずさ、待つ時間、考える時間まで「取り除くべき摩擦」として扱われていることへの違和感が背景にあります。
こんな時に使える?!
フリクション・マキシングは、便利な方法があると分かっていても、「ここは少し手間を残した方がいいかもしれない」と考える時に使えます。
“I’m friction-maxxing this part of the process. I want to think it through before asking AI.”
「この工程はあえてフリクション・マキシングしている。AIに聞く前に自分で一度考えたい」
- 「ここまでAIに任せると、考える工程までなくなりそう。少しフリクション・マキシングした方がいいかも」
「この研修、全部オンデマンドにせず、対面で議論する時間を残すのもフリクション・マキシングですね」
効率化を止めるというより、どの摩擦はなくしてよくて、どの摩擦は残した方がよいのかを話すための言葉です。
日本ではどう広がっている?
日本でも2026年には、「フリクション・マキシング」という表記がビジネスメディアに登場するようになっています。
リクルートワークス研究所は2026年8月の記事で、この言葉を、過度のAI依存を避けて「考える工程」を人に残す動きとして紹介しています。AI要約ではなく原文を読む、会議メモを手書きする、メールより対面で話す、といった例が挙げられています。
まだ一般的なビジネス用語ではありません。ただ、AI活用が進むほど、「どこまで自動化するか」「どこは人が考えるか」「どの不便は残した方がよいか」という話は増えていきます。
仕事、教育、組織設計、デジタルウェルビーイングなど、複数の領域で使われる可能性がある言葉です。
SXSW VIEW
「フリクション・マキシング」という言葉が広がった年、SXSWではどう話されていた?
SXSW 2026のには、Friction-maxxingという言葉そのものが扱われたわけではないものの、かなり近い問題設定が出されていました。
SXSW 2026 SESSION
How To Meaningfully Connect in a World That Has Gone to Sh*t
このセッションでは、便利さが人とのつながり方にも入り込む中で、信頼や関係を取り戻すために必要なものとして “intentional friction” が挙げられています。
Friction-maxxingが、日常生活やAI利用の中で「消しすぎた摩擦を戻す」言葉として広がったのに対し、SXSWでは、職場や人間関係の中で意図的な摩擦が信頼やつながりに必要だという議論が出ていました。
SXSW 2026 SESSION
The Great Recalibration: Centering Humanity in the Age of AI
こちらでは、AI生成コンテンツが増える一方で、人々が “the tactile, the real, and the human” を求めているという問題が扱われました。
どちらも「便利さを減らそう」という話そのものではありません。ただ、効率化や自動化で消えていくものの中に、残した方がよいものがあるという問題意識は共通しています。

宮川麻衣子
Futurist
SXSW Japan 代表
2012年よりSXSWに継続参加
Futurist Perspective
AIを使い始めてから、私自身も「考える前に聞く」ことが増えました。
もちろん便利です。でも、少し時間をかけて考えていた時にしか出てこなかったこともある気がします。
Friction-maxxingという言葉を知ってから、「何を効率化するか」だけでなく、「不便なままな方が良かったな」ということを考えるようになりました。不便を増やしたいわけではなく、なくしちゃいけなかったんじゃないかという後悔することがあるのではないかと思っています。。
KEYWORD TIMELINE
「フリクション・マキシング」という言葉はこのように広まっている
2026年1月
Kathryn Jezer-MortonがThe Cutで “In 2026, We Are Friction-Maxxing” を発表。意図的に不便を残す考え方として言葉が広がる。
2026年1〜2月
The GuardianやForbesなどが相次いで紹介。生活だけでなく、AI利用や仕事の文脈にも広がる。
2026年3月
SXSW 2026で “intentional friction” を、信頼やつながりを取り戻すための要素として扱うセッションが開催される。
2026年8月
日本でもリクルートワークス研究所が「フリクション・マキシング」を、AI時代に「考える工程」を人に残す考え方として紹介。
2026年現在
生活、仕事、教育、AI利用などで、利便性を最大化しすぎない考え方として使われている段階。
SOURCE
- The Cut, “In 2026, We Are Friction-Maxxing”
- The Guardian, “Friction-maxxing: could less convenience lead to much more happiness?”
- リクルートワークス研究所, フリクション・マキシングに関する記事
- SXSW 2026, “How To Meaningfully Connect in a World That Has Gone to Sh*t”
- SXSW 2026, “The Great Recalibration: Centering Humanity in the Age of AI”



