自治体の海外展開支援はどう連携する?ドイツの企業派遣・共同拠点の事例

SXSW海外展開支援ケーススタディ

SXSW JAPAN / INTERNATIONAL CASE STUDY

海外展開支援をどう組み合わせる? ドイツのGerman Hausに見る国・地域・産業の連携

企業派遣、米国市場探索、音楽輸出、地域プロモーション。異なる支援機関がSXSWで同じ拠点を活用する仕組みを、ドイツの事例から考える。

自治体や産業支援機関が、地域のスタートアップを海外展示会へ派遣する。参加企業の選定、渡航前の研修、現地での商談支援など、事業の設計には多くの検討事項があります。

特に複数の自治体や支援機関が参加する場合、それぞれの支援制度をどう組み合わせればよいのでしょうか。

ドイツでは、米国で開催される国際イベントSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)の期間中に、German Hausという共同拠点を設けています。

ここには、ベルリンの産業振興機関、全国のスタートアップ支援ネットワーク、米国市場への進出を支援するアクセラレーター、音楽産業の輸出支援組織などが参加しています。

異なる制度を持つ組織が、なぜ同じ場所で活動するのか。German Hausの成り立ちと具体的な企業支援プログラムから、その仕組みを見ていきます。

German Hausとは何か。音楽から始まったドイツの共同発信

German House

German Hausは、SXSWの開催期間中にドイツの企業、スタートアップ、音楽家、クリエイティブ産業の関係者などが集まる共同拠点です。2025年にはオースティン中心部のSpeakeasy(412 Congress Avenue)で、企業紹介、パネル、交流、コンサートなどが開催されました。

ドイツのSXSWでの共同発信は2010年に始まり、2013年にはGerman Hausという専用拠点が設けられました。最初から現在のような複数産業の連携が完成していたわけではありません。音楽を含む文化・クリエイティブ産業の海外発信を背景に、企業やテクノロジーの活動も重ねられてきました。

2025年には音楽・映画・テクノロジー分野の20以上のパートナーが協力。2026年も複数の地域・産業支援機関がGerman Hausのプログラムに参加しています。

運営する組織と、拠点を利用する支援機関は違う

German Hausを理解するうえで重要なのは、会場の企画運営と、そこで実施される個別の企業支援事業を分けて考えることです。

2026年のGerman Hausは、Initiative MusikのGerman Music ExportがStartup Germanyなどと協力して企画運営し、ドイツ連邦経済・エネルギー省の支援を受ける形で発表されています。一方、Berlin Partner、de:hub、German Acceleratorなどは、それぞれの目的に沿った活動を行っています。

GERMAN HAUS|参加の仕組み

共通拠点の運営と、個別の支援事業を分けて見る

連邦レベルの公的支援

共同発信・産業支援の枠組み

German Haus|SXSW Austin

企画運営:German Music Export / Initiative Musik(Startup Germanyなどと協力)

ピッチ・パネル・交流・音楽プログラム

以下の機関は、それぞれの事業を拠点の活動に接続

Berlin Partner

ベルリン代表団・地域発信

de:hub

デジタル拠点・スタートアップ

German Accelerator

米国市場探索・企業育成

その他の地域・産業機関

独自の企業紹介・交流企画

公開資料に基づく役割の模式図。資金・契約の流れ、指揮命令系統、すべての組織の共同運営を示すものではありません。

これは、一つの統一された企業派遣制度を図にしたものではありません。企業の選定、渡航前の準備、現地での活動、帰国後の支援は、各機関が独自の事業として設計しています。

共同拠点を利用することで、異なる地域や産業の関係者が同じ場所で活動する機会を設けられます。

German

ベルリンは、独自会場からGerman Hausへ。企業派遣を継続する仕組み

この関係が具体的に見えるのが、ベルリンの経済振興機関Berlin Partnerです。

2024年、Berlin PartnerはCreative Tech分野のスタートアップ8社をSXSWに派遣。3月12日にはオースティンのEL C Barで「Berlin Takeover」を開催し、パネルディスカッション、企業ピッチ、音楽などを組み合わせました。この年、German Hausの通常の共同拠点は設けられていませんでした。

2025年にはGerman Haus内で「BERLIN LEVEL @ GERMAN HAUS」を開催し、Creative Tech企業のピッチや、AIと音楽、XRと映画などのテーマを紹介しました。2026年には19社・団体の代表団を組織し、German Hausで「Berlin Takeover」を実施しました。

2024年|EL C Barで独自のBerlin Takeover/スタートアップ8社

2025年|German HausでBERLIN LEVEL/企業ピッチなど

2026年|German HausでBerlin Takeover/19社・団体の代表団

3年間を通じて、ベルリン企業の海外展開を支援する目的は共通しています。一方、活動の会場やプログラムは変化しています。企業派遣事業と、現地で利用する拠点を別々に設計していることが分かります。

企業派遣の中身をどう設計するか。de:hubとGerman Accelerator

de:hubは、ドイツ各地のデジタル産業拠点を結ぶネットワークです。2025年のSXSWには50社を超えるスタートアップが参加し、44社が登壇、300件超の有効な対話があったと報告しています。これらは現地での活動量を示すもので、契約件数や投資実行件数ではありません。

German Acceleratorの「U.S. Market Discovery AI at SXSW」は、米国市場への展開を検討するAIスタートアップ向けのプログラムです。2026年の募集案内では、渡航前の準備、オースティンでの市場探索やピッチ、帰国後の振り返りを一連の活動として位置づけています。

  • 渡航前:米国市場での仮説や提案内容を整理し、ピッチを準備する。
  • 現地:企業・投資家・専門家との対話や訪問を通じて市場の反応を確かめる。
  • 帰国後:得られた反応を整理し、次の展開を検討する。

SXSWを単発の出展機会として扱うのではなく、既存の育成・市場探索プログラムの一部に組み込んでいる点が参考になります。

なぜ音楽とビジネスを同じ場所で展開するのか

German Hausでは、音楽はビジネスイベントの集客のためだけに置かれているわけではありません。German Music Exportにとって、SXSWは音楽家や音楽産業関係者が海外のレーベル、プロモーター、メディアなどと接点を持つ機会です。

同時に、Berlin Takeoverなどでは企業ピッチと音楽プログラムが組み合わされています。テクノロジー、映画、音楽、ビジネスの関係者が同じ期間にオースティンへ集まるという、SXSWならではの開催環境を利用した構成です。

異分野の接点がどれほど具体的な事業成果につながったかは、個別の追跡調査が必要です。

日本の自治体・産業支援機関は、何を参考にできるか

German Hausから考えられるのは、既存の支援事業をすべて統合することではありません。それぞれの目的を維持したまま、海外で共有できる活動を設計することです。

  • 国内のスタートアップ育成事業に、SXSWでのピッチや市場検証を組み込む。
  • 複数自治体が共同拠点を利用し、地域別・産業別に異なる企画を実施する。
  • 産業振興、大学、文化・音楽分野、民間企業のプログラムを、同じ国際イベントに接続する。

実施には、会場利用契約、費用と責任の分担、参加企業の選定、SXSWの名称やロゴの使用、公式プログラムとの関係、事後の成果確認などの整理が必要です。German Hausの運営費全体や各機関の負担割合は、公開資料からは把握できません。

ブラジルのSP Houseとは、何が違うのか

ブラジルのSP Houseでは、CreativeSPによる企業派遣と、州・市・産業支援機関による共同拠点の運営を紹介しました。German Hausでは、国全体の共同発信拠点に、地域や産業ごとの支援事業が参加しています。

SP Houseは「共同拠点をどう企画・運営するか」、German Hausは「既存の支援事業を共通拠点にどう接続するか」を考える事例です。

関連記事:海外展示会への企業派遣を成果につなげる|サンパウロ州とSXSWの事例

海外での活動を、国内の支援事業とどうつなげるか

ベルリンは地域の企業を紹介し、de:hubはスタートアップの登壇や交流を支援し、German Acceleratorは米国市場の検証を支援します。German Music Exportは音楽産業の国際展開を担います。それぞれの目的も、成果の測り方も同じではありません。

日本の自治体や産業支援機関がSXSW参加を検討する際にも、まず現在の支援事業を整理し、企業や参加者にどのような国際的な接点が必要なのかを考えることができます。そのうえで、独自イベント、共同拠点、既存プログラムへの参加を選ぶ方法があります。

SXSWでの企業派遣・現地企画について

SXSW Japan Officeでは、自治体、産業支援機関、大学、企業によるSXSW参加や現地プログラムについて相談を受け付けています。

海外市場への展開や現地での交流・共同企画を検討されている方は、お問い合わせください。