SXSW JAPAN / INTERNATIONAL CASE STUDY
英国はSXSW参加企業を9〜12か月支援する。Innovate UKの海外展開プログラム
海外展示会への参加を、企業の成長にどうつなげるのか。英国Innovate UKは、SXSWへの渡航前から帰国後までを一つの支援プログラムとして設計しています。
海外の展示会やカンファレンスに企業を派遣するとき、現地での数日間をどう活用するかに目が向きがちです。しかし、初めて進出する市場では、誰に会うかを決める準備にも、帰国後に商談を続ける体制にも時間がかかります。英国には、そうした前後の活動まで支援する制度があります。
英国のイノベーション支援機関Innovate UKが実施するGlobal Business Innovation Programme(GBIP)は、その一例です。企業は米国テキサス州オースティンのSXSWに参加し、テクノロジーやクリエイティブ産業の関係者と出会います。現地での面談や市場探索に向けて事前に準備し、帰国後も専門家の支援を受けながら事業機会を追いかけます。
2025年のSXSW向け募集では、クリエイティブ産業とAI分野を合わせて最大30社分の参加枠が設けられました。GBIP全体の標準的な支援期間は9〜12か月。SXSWへの訪問は、その長いプログラムの中に位置づけられています。
海外進出に動ける企業を選ぶ。経営幹部の参加も条件に
2025年向けの募集は、Creative CatalystとAIの二つの枠で構成されました。Creative Catalystではメタバース、デジタル広告、音楽技術、ゲーム、映像制作、没入型技術などの企業を最大15社。AI枠では放送、文化芸術、デザイン、ファッション、映画・テレビ、ゲーム、音楽、XR/VRなどにAI技術を応用する企業を最大15社募集しました。
応募対象は英国を拠点とする、海外展開に意欲のあるイノベーション企業です。従業員250人未満であることに加え、CEO、創業者、または意思決定権を持つ経営幹部が全活動に参加できることを求めています。
参加者に経営判断を担う人を求めるのは、現地で見つけた提携先との協議や市場参入の検討を、帰国後の事業活動につなげるためでしょう。視察担当者だけでなく、次の一手を決められる人が現地に行く設計です。
2026年向け募集では、技術が概念実証を超えた段階にあることも明記されました。さらに2027年向け募集では、MVPを超え、売上を含む商業的な実績があることなど、対象を絞った条件が示されています。募集年度によって基準が異なるため、各年の条件を一括して説明することはできません。
SXSWの前後に何をする? 3段階の支援プログラム

SXSW参加を中心に、前後の事業活動をつなぐ
Innovate UK|Global Business Innovation Programme
01|GET READY
渡航前
- 市場理解・商習慣
- 知的財産の検討
- 提供価値の整理
02|VISIT THE MARKET
SXSW現地
- 事前調整した面談
- 企業・研究機関との接点
- 市場・協業可能性の探索
03|EXPLOIT THE OPPORTUNITY
帰国後
- フォローアップ研修
- 専門家の個別支援
- 活動計画に沿った継続支援
3段階は支援内容の分類を示す模式図。各段階の期間の長さを表すものではありません。
GBIPの活動は「Get Ready」「Visit the Market」「Exploit the Opportunity」の3段階に分かれます。2025年のSXSW向けプログラムの日程を見ると、現地訪問の約2か月前から準備が始まり、帰国後の6月にもワークショップが組まれていました。
01|Get Ready:市場に入る前に準備する
2025年1月14〜15日には、渡航前のワークショップが予定されていました。米国市場の商習慣や文化的な違い、知的財産の保護などを学び、自社の技術やサービスを現地の相手にどう伝えるかを準備します。会期が始まってから商談相手を探すのではなく、渡航前から話す内容を磨いていきます。
02|Visit the Market:SXSWを使って市場を確かめる
2025年の米国訪問は3月7〜14日。SXSWのカンファレンスや関連イベントに参加するだけでなく、企業、研究機関、協業候補との面談も予定に組み込みます。オースティンに集まる多様な業界の人々との接点を、自社の事業に関係する具体的な対話へとつなげる時間です。
03|Exploit the Opportunity:帰国後に接点を事業活動へつなぐ
帰国後の2025年6月11日には、フォローアップのワークショップが予定されていました。Innovate UK Business Growthの専門家による個別支援も受けられます。現地で出会った相手とどのように関係を続けるか、見つかった機会をどのように事業に生かすかを検討します。
2026年向け募集でも3段階は維持されました。準備ワークショップは2026年1月28〜29日、米国訪問は3月11〜17日、事後ワークショップは6月10日とされています。つまり、現地訪問は春の一時点に集中する一方、前後の活動は複数月にわたります。
渡航費は公的支援。参加企業には最後まで取り組む条件も
2025年向け募集では、採択企業の代表者1名について、Innovate UKが航空券、宿泊、現地移動、カンファレンス参加費を負担・手配すると明記しました。企業全員の渡航費が支給されるわけではありません。
2026年向け募集には、採択後に£1,000のコミットメント・フィーを支払い、準備研修、現地訪問、事後研修、専門家との継続的な活動、および合意した活動計画を完了した場合に返金される条件が明記されている。未完了の場合は一部または全部を失う可能性があります。
渡航費を支援する一方で、企業にも最後まで参加することを求めています。現地訪問だけで活動を終えず、帰国後の取り組みまで続けてもらうための条件です。
SXSWの英国拠点「UK House」との関係
SXSWには、英国の企業やクリエイティブ産業を紹介するUK Houseという拠点も設けられています。2025年、Innovate UK Business Connectは、GBIPのCreative Catalyst・BridgeAI参加企業をUK Houseで紹介したと報告しました。英国政府のDepartment for Business and Trade(DBT)が関わる場で、企業が自社技術を示し、来場者や関係者と交流する機会になりました。
UK Houseは英国の企業やクリエイティブ産業を紹介する場であり、GBIPは企業を選び、渡航前後まで支えるプログラムです。2025年には両者が接点を持ちましたが、それぞれ役割が異なります。
参加企業は、SXSWで何を得たのか
2025年にGBIPでSXSWへ参加したMy SMASH MediaのCEO、Fiona Gilliesは、米国の関係者へのアクセスや業界内の関係づくり、米国ユーザーの増加、事業目標の整理に役立ったと、Innovate UKの公式募集ページで語っています。
一社の体験談からプログラム全体の成果を測ることはできません。それでも、現地での出会いが帰国後のユーザー獲得や事業の検討につながり得ることを、参加企業の言葉からうかがえます。
日本の企業派遣事業に取り入れられること
日本でも自治体や産業支援機関が、スタートアップを海外展示会へ派遣する事業を実施しています。航空券や出展費用の補助、現地での同行は大切な支援ですが、企業がその後に何を進められるかも考えておきたいところです。
応募段階では、どの企業が海外市場で具体的な活動を始められるかを見極めます。渡航前には、誰と会い、何を確かめるかを整理します。現地では面談と市場探索の機会をつくり、帰国後には企業が接点を維持し、提携や市場参入の可能性を検証する活動を支援します。
参加企業数や現地での面談件数に加えて、帰国後に商談が続いたか、共同開発や実証の検討が始まったか、現地の販路づくりが進んだかを追うこともできます。企業にとっては、帰国後の数か月に相談できる相手がいることが、次の行動を後押しするかもしれません。
ブラジルのSP Houseでは企業派遣と共同拠点の組み合わせを紹介しました。ドイツのGerman Hausでは、異なる支援機関が一つの拠点を活用する方法を取り上げました。英国のGBIPは、企業への支援を渡航前から帰国後まで続けるという点で、両国とは違う参考例になります。
SXSWでの企業派遣・現地企画について
SXSW Japan Officeでは、自治体、産業支援機関、大学、企業によるSXSW参加や現地プログラムについて相談を受け付けています。
海外市場への展開や現地での交流・共同企画を検討されている方は、お問い合わせください。



