STARTUP GUIDE|GLOBAL PITCH COMPETITIONS
海外のスタートアップイベントやピッチコンテストに挑戦してみたい。
けれど、
「どの大会に応募すればいいのか分からない」
「英語のピッチに自信がない」
「応募書類で何を見られるのか分からない」
「ファイナリストに選ばれた後、現地で何をすればいいのか分からない」
という人も多いと思います。
海外ピッチコンテストは、単に「英語でプレゼンをして順位を競う場所」ではありません。
イベントによっては、投資家、事業会社、メディア、アクセラレーター、他国の起業家などと一度に接点を持てる場所でもあります。
重要なのは、有名な大会に出ることではなく、自社のステージや目的に合った場所を選び、応募の段階から「その後に何を起こしたいか」まで考えておくことです。
この記事では、代表的な海外ピッチコンテストの違いから、応募準備、英語ピッチ、現地での動き方までを整理します。
海外ピッチコンテストでは、何が得られる?
ピッチコンテストというと、まず「優勝」や「賞金」を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、イベントによっては賞金や投資機会があります。
ただ、海外ピッチへ参加する意味は、それだけではありません。
- 投資家に自社を知ってもらう。
- 海外企業との事業提携につなげる。
- 現地の顧客に反応を聞く。
- メディアに知ってもらう。
- 競合や他国のスタートアップを見る。
- 海外の起業家とつながる。
さらに、自社の事業説明が、日本以外の人にも本当に通じるのかを試す機会にもなります。
どの大会なら勝てるか
今の自社は、海外へ出ることで何を得たいのか
から考えると、選ぶイベントも変わってきます。
代表的な海外ピッチコンテストは何が違う?
海外にはさまざまなピッチコンテストがあります。ここでは、代表的なものをいくつか見てみます。
SXSW Pitch|技術だけでなく、その先の産業や社会まで見せる
SXSW Pitchは、米国テキサス州オースティンで開催されるSXSWのスタートアップコンペティションです。
2027年は3月16〜17日に開催され、64社のスタートアップが8つの分野で登壇する予定です。これまで700社以上が参加し、過去参加企業による資金調達・Exitの総額は225億ドルを超えています。2027年の応募最終締切は11月13日で、Regular Entryの応募料は225ドルです。 SXSW Pitch公式を見る →
SXSW Pitchの特徴の一つは、投資家だけを対象にしたイベントではないことです。
審査や会場には、業界の専門家、投資家、メディア、アーリーアダプターなどが関わります。さらにSXSW自体が、InnovationだけでなくFilm & TV、Musicなど、異なるクリエイティブ産業が同時に交差するイベントです。
WHAT CHANGES?
この技術はすごい
↓
この技術によって、どんな産業や人の行動が変わるのか
まで伝えられるスタートアップと相性があります。
日本からも複数のスタートアップが選出されており、2025年には内視鏡トレーニングシステムを開発するMyEndoscopeと、ロボティクス領域のMUSEがファイナリストに選ばれました。 日本からの挑戦例を見る →
Slush 100|スタートアップと投資家の密度が高い
Slush 100は、フィンランド・ヘルシンキで開催されるSlushのスタートアップコンペティションです。
Slush自体がFounderとInvestorの接点を非常に重視しており、資金調達やベンチャーキャピタルとのネットワークを目的とするスタートアップにとって代表的なイベントの一つです。2026年のSlush 100では1,400社を超える応募から100社が選ばれ、最終的な優勝企業には50万ユーロのequity-free賞金が用意されています。 Slush 100公式を見る →
SXSWのように文化やクリエイティブ産業まで広く交差するというより、スタートアップと資本の世界へ高い密度で入っていくタイプのイベントと考えると分かりやすいでしょう。投資家との面談や資金調達を海外挑戦の中心に置いている場合は、有力な選択肢になります。
TechCrunch Startup Battlefield|「なぜ今、この会社なのか」を問われる
TechCrunch Startup Battlefieldは、TechCrunch Disruptで行われる代表的なスタートアッププログラムです。
選考ではTechCrunchのStartup Battlefieldチームと編集チームが、何が新しく、重要で、注目に値するのかという観点も含めて企業を評価しています。2026年は200社がStartup Battlefield 200に選ばれ、その中からライブピッチへ進む企業が絞られます。 Startup Battlefield公式を見る →
そのため、技術や事業性だけでなく、
- なぜ今この会社を見る必要があるのか
- 何が新しいのか
- 既存のカテゴリーをどう変える可能性があるのか
という説明も重要になります。海外メディアへの露出や、「世界に対して自社をどう説明するか」を重視するスタートアップにとって特徴的な舞台です。
Web Summit PITCH|大規模な国際テックイベントの中で競う
Web Summitにもスタートアップ向けのPITCHがあります。
Web Summitのスタートアッププログラムには、スタートアップだけでなく、大企業、投資家、メディアなど幅広い参加者との接点があります。2026年の公式案内では、2,500社以上のスタートアップ、1,500人以上の投資家、7万人以上の参加者を掲げています。 Web Summit Startupsを見る →
そのため、
- 海外投資家だけでなく、事業会社、顧客、メディアなどとの接点も広げたい
- 複数地域のスタートアップ市場を広く見たい
という会社には向いています。
「一番有名な大会」に応募すればいいわけではない
SXSW Pitch、Slush 100、Startup Battlefield、Web Summit PITCH。
名前だけを見ると、「どれが一番すごい大会なのか」と比較したくなります。
でも、会社によって目的は違います。
- 投資家との接点を最優先したい。
- 海外企業との提携を探したい。
- 技術によって社会や産業がどう変わるのかを伝えたい。
- 海外メディアへ露出したい。
自社はいま何を必要としているのか。
知名度ではなく、「その場に誰がいるのか」「何を評価されるのか」「その後に何が起こり得るのか」で選んだ方が、海外ピッチを活かしやすくなります。
応募前に、まずEligibilityを確認する
応募したい大会を見つけたら、最初に確認したいのが応募資格です。
イベントによって、会社設立時期、製品のローンチ時期、調達額、MVPの有無、対象カテゴリー、過去の出場歴などに条件があります。
たとえばSXSW Pitch 2027では、主に次のような条件があります。
- 製品・サービスが2024年1月1日以前にローンチされていないこと
- 創業者が会社の持分を保有していること
- 累計調達額が1,000万ドルを超えていないこと
- SXSW Pitchの対象カテゴリーに該当すること
応募資料をすべて作ってから対象外だと分かるのは避けたいところです。
まず公式のEligibilityを確認し、それから準備を始めます。 SXSW Pitch応募条件を見る →
応募書類は「会社紹介」ではない
海外ピッチの応募でありがちなのが、日本で使っている会社紹介資料を英訳することです。
会社概要、沿革、技術、実績。もちろん必要な情報ですが、それだけでは審査する側に、
なぜ、この会社を今選ぶべきなのか
が伝わらないことがあります。応募書類では、
- どんな問題を解決しているのか。
- なぜその問題が今重要なのか。
- 既存の方法ではなぜ不十分なのか。
- 自社はどう解決するのか。
- 実際に顧客やユーザーが使い始めているのか。
- どこまで市場が広がる可能性があるのか。
という流れを意識します。
日本国内では説明しなくても通じる前提が、海外ではまったく共有されていないこともあります。「自社について説明する」のではなく、その問題を初めて聞く人でも理解できるようにすることが重要です。
まず1文で自社を説明できるか
応募書類を書く前に、一度試してみたいのが、
ONE-SENTENCE PITCH
We help ○○ do △△ by □□.
くらいの短さで自社を説明することです。
誰の、どんな問題を、どう解決しているのか。
これが一文で伝わると、その後の説明も組み立てやすくなります。
一文ですべてを説明する必要はありません。目的は、「これは何の会社なのか」を最初の数秒で理解してもらうことです。
「技術がすごい」だけでは伝わりにくい
技術系スタートアップでは、独自アルゴリズム、精度、特許、研究実績などを中心に説明したくなります。
もちろん、それらは重要です。
しかし審査する側が知りたいのは、その技術によって何が変わるのかです。
- 従来は誰が困っていたのか。
- 今はどんな方法で対処しているのか。
- なぜその方法では十分ではないのか。
- 自社の技術が入ると、時間、コスト、体験、アクセスなどがどう変わるのか。
そこまでつながると、技術の意味が理解されやすくなります。
ピッチデックは「会社案内を短くしたもの」ではない
海外ピッチでは、発表時間が数分しかないこともあります。
そのため、普段使っている20〜30ページの会社説明資料からページを削っただけでは、ストーリーが伝わりにくくなります。
PITCH STORY
Problem → Why now → Solution → Evidence → Market → Why us
といった流れで、「この会社について、もう少し話を聞きたい」と思ってもらうところまで持っていくことが重要です。
すべての情報を説明する場所ではありません。短い時間だからこそ、「何を言わないか」も必要になります。
英語は流暢さより、短く明確に
海外ピッチで大きな不安になりやすいのが英語です。
でも、ネイティブのように話すことそのものが目的ではありません。
- 一文が長い。
- 情報を詰め込みすぎる。
- 日本語特有の抽象表現をそのまま英訳している。
- 専門用語が多い。
こうした方が、内容を理解してもらいにくくなることがあります。
KEEP IT CLEAR
The problem is…
Today, companies have to…
We built…
Our customers can now…
と進める方が、聞いている側には分かりやすいこともあります。英語力を見せるのではなく、事業を理解してもらうための英語にします。
Q&Aはピッチ本編と同じくらい準備する
ピッチが終わった後に、審査員とのQ&Aが行われる大会もあります。
ここでは、競合、市場規模、顧客獲得、ビジネスモデル、技術優位性、規制、海外展開、チームなど、ピッチ本編では詳しく話さなかった部分を聞かれます。
自分たちが最も聞かれたくない質問は何か。
も考えてみます。
答えにくいところは、審査員から見ても「まだ説明が弱いところ」である可能性があります。ピッチ原稿だけを繰り返すのではなく、想定問答まで含めて練習しておくと、本番で余裕が生まれます。
SXSW JAPAN’S NOTE
ピッチは、ステージに上がる前から始まっている
海外ピッチというと、どうしても数分間の本番に目が向きます。
でも、SXSW Pitchのようなイベントでは、ファイナリストに選ばれた時点から機会が始まっています。
企業名が公開される。投資家や参加者が事前に調べる。現地で他の起業家と会う。ピッチを見た人から声をかけられる。メディアの取材につながる。別の企業や投資家を紹介される。
だから、「本番で勝つためのピッチ」だけではなく、この機会を使って、誰と何を始めたいのかまで考えておくことが重要です。
ファイナリストに選ばれたら、ピッチ練習だけをしない
選出の連絡が来ると、どうしてもプレゼン練習に意識が集中します。
もちろん必要です。
ただ、現地へ行くのであれば、その時間をピッチだけで終わらせるのはもったいありません。
- どんな投資家が参加するのか。
- 会いたい企業はあるか。
- 自社の顧客になりそうな人はいるか。
- どんなメディアが来るか。
- 他のファイナリストにはどんな会社があるか。
事前に確認し、会いたい相手がいるなら連絡しておきます。
OUTREACH
We’ll be pitching at SXSW Pitch this March.
という一文自体が、相手に話を聞いてもらう理由になることもあります。
優勝しなかったら、挑戦は失敗なのか?
ピッチコンテストなので、優勝する会社は限られています。
しかし、
- 海外の投資家とつながった。
- 海外顧客の反応を知った。
- 自社の説明の弱点が分かった。
- 競合を知った。
- メディアに取り上げられた。
- 次のイベントへの機会が生まれた。
という結果が残ることもあります。
ピッチコンテストを「勝ったか負けたか」だけで評価しないこと。
そのイベントによって、自社の次の一歩が何か進んだかを見る方が重要です。
応募前のチェックリスト
応募する前に、最低限次の点を確認してみてください。
- 応募資格を満たしているか
- そのイベントには誰が参加しているか
- 海外へ出る目的は何か
- 一文で事業を説明できるか
- Problemを海外の人にも理解してもらえるか
- なぜ今なのか説明できるか
- 実績やTractionを示せるか
- 競合との違いを説明できるか
- Q&Aに答えられるか
- 選ばれた場合に会いたい人を想像できるか
完璧になるまで待つ必要はありません。
むしろ海外ピッチへ応募する過程そのものが、
自分たちは何をしている会社なのか
世界にとって、なぜ今これが必要なのか
を整理する機会になります。
日本からSXSW Pitch 2027へ挑戦するなら
SXSW Pitch 2027は、2027年3月16〜17日にオースティンで開催されます。応募最終締切は2026年11月13日です。
そして2027年は、SXSW JapanとZIPAIRが、日本からSXSW公式コンペへ挑戦する参加者を支援しています。
SXSW 2027 × ZIPAIR
対象コンペのファイナリストへ、成田=ヒューストン往復航空券2名分を提供
- SXSW Pitch
- SXSW EDU Launch Startup Competition
- SXSW EDU Student Impact Challenge
コンペごとに応募条件や締切が異なります。最新情報は案内ページと各公式サイトで確認してください。
海外ピッチへの挑戦では、応募料や準備だけでなく、実際に現地へ向かう航空券や宿泊なども負担になります。
「挑戦してみたい」と思った人が、その次の「実際に行く」という段階へ進みやすくするための支援です。
実際にSXSW Pitchへ挑戦すると、何が起きる?
2025年には、MyEndoscopeがStudent Startups部門のファイナリストとしてSXSW Pitchへ参加し、ZIPAIRによる渡航支援を受けました。
SXSW Japanでは、その挑戦を振り返るイベントで、応募から選考、Austinでの本番、その後に生まれた変化までを聞いています。
募集要項だけでは分からない、
- ファイナリストになると、実際には何を準備するのか
- 現地へ行ったことで、何が変わったのか
を知りたい方はこちらも参考にしてください。
REAL EXPERIENCE
SXSW Pitchファイナリストに聞く|舞台裏とZIPAIRが支える理由
MyEndoscope伊藤守さんとZIPAIRから、応募、現地登壇、渡航支援、その後について聞いたレポートです。
海外ピッチに挑戦することは、英語でうまく話せるかを試すことではありません。
自分たちが解こうとしている問題を、世界の人にも理解してもらえる形へ変え、次の関係をつくりに行くこと。
SXSW Pitchは、その選択肢の一つです。そして日本から挑戦する人には、現地へ向かうところまで支える仕組みがあります。
参考・公式情報
- SXSW Pitch
- Slush 100
- TechCrunch Startup Battlefield
- Web Summit Startups / PITCH
- SXSW 2027 × ZIPAIR|日本の挑戦者への渡航支援
文:SXSW Japan
各コンテストの開催日、応募条件、料金、参加規模などは2026年9月時点の各主催者公式情報をもとに構成しています。応募時には必ず最新の公式要項をご確認ください。



