SXSW 2026、開催前に注目していた3つのテーマ|AI・信頼・分散は実際どう語られた?

SXSW2026へ行こう!説明会1

FUTURIST’S VIEW|BEFORE / AFTER

SXSWが始まる前に「今年は何が話題になりそうか」を考えておくと、現地で見えるものが少し変わります。2026年の半年前に置いていた3つのテーマを、開催後に読み直してみます。

宮川麻衣子 Maiko Miyagawa

宮川麻衣子
Director of SXSW Japan
Futurist / SXSW Official Speaker

ABOUT THIS ARTICLE

この記事の元になったのは、2025年9月17日に開催した「SXSW 2026 オンライン説明会シリーズ」第1回です。

当時はまだSXSW 2026の全貌が見えていない時期でした。そこで、前年までのSXSWや社会の変化から、「2026年はこのあたりの議論が増えるのではないか」と3つのテーマを挙げていました。

ここでは、その3テーマを実際のSXSW 2026の会場で見えたものと照らして振り返ります。

SXSWへ行く前、私は毎年いくつか「今年はここを見ておきたい」という観測ポイントを持っています。

未来を何年も先まで言い当てようという話ではありません。

プログラムが出揃う前の段階で、社会の動きや前年までのSXSWを見ながら、半年後の会場ではどんな議論が前に出てくるだろうと考えておく。

2025年9月の説明会では、SXSW 2026を見るためのテーマとして次の3つを挙げました。

WHAT WE WERE WATCHING|SEPTEMBER 2025

01|AIネイティブ社会の始まり
AIが新しいツールではなく、最初から存在することを前提に、人や社会の行動が変わっていく。

02|信頼が新しい通貨になる
生成コンテンツやディープフェイクが増えるほど、「誰を信じるか」「何が本物か」が重要になる。

03|テクノアナキズム ─ 技術による分散社会
AIやネットワーク技術によって、既存の中央集権的な仕組みやプラットフォームの力関係が変わるのではないか。

半年後、実際のSXSW 2026ではどうだったのでしょうか。

3つとも、そのままの名前で大きなテーマになったわけではありません。

でも、近い問いは確かにありました。そして実際に現地で見ると、開催前に想像していたものとは少し違う方向へ進んでいたものもありました。

01|AIネイティブ社会 → AIが「使うもの」から「動くもの」へ

開催前に「AIネイティブ社会」と呼んでいたとき、主に考えていたのは人間側の変化でした。

AIを特別な新技術として学ぶのではなく、最初からAIがある環境で育ち、働き、生活する人が増えていく。

教育、仕事、倫理、犯罪、創作など、さまざまな領域で「AIがない状態」ではなく「AIがある状態」を前提に議論が進むのではないか、と見ていました。

実際のSXSW 2026で、それ以上に強く感じたのはAgentic AIの存在でした。

AIは人間が質問したときだけ答える存在ではなくなりつつあります。

目的を受け取り、情報を探し、比較し、判断し、別のシステムとやり取りしながら、ある程度自律的に行動する。

「The Internet After Search」では、AIエージェントの普及によって、検索エンジンを中心としてきたインターネットの構造そのものが変わる可能性が議論されていました。

Design領域でも、UX(User Experience)からAX(Agentic Experience)へという考え方が出てきました。

人間にとって使いやすいUIだけではなく、AIエージェントが理解し、選び、行動できる環境をどう設計するのか。

BEFORE → AFTER

AIがあることを前提に「人間がどう変わるか」から、
AIそのものが行為主体になると「社会がどう変わるか」へ。

開催前に考えていた「AIネイティブ」という方向はありました。

ただ、実際の会場で一段先に見えたのは、AIを自然に使う人間というより、人間とAIエージェントの両方が参加する社会でした。

02|「信頼」は、本物か偽物かだけではなかった

2つ目に注目していたのが、「信頼」です。

2025年9月の時点では、生成AIによる画像、動画、文章、ディープフェイクが増えることで、「本物をどう見分けるか」が重要になると考えていました。

SXSW 2026でも、信頼の問題は確かにさまざまな領域に現れていました。

ただし、現地で目立ったのはフェイクを見抜く方法だけではありません。

Healthでは、AI、遺伝子治療、ウェアラブルなどが人間の健康に深く入り込むなかで、誰の説明を信頼するのか、どんな根拠をもとに判断するのかが問われました。

Musicでは、AIが学習したデータへの補償、著作権、ロイヤリティ、ボットによる不正など、創作物をめぐる信頼と対価の問題が前面に出ていました。

AIが人間の代わりに判断するようになると、「この情報は本物か」という問いだけでなくなります。

誰のデータを使ったのか。

誰がこの判断をしたのか。

間違ったとき、誰が責任を持つのか。

生まれた価値は、誰に戻るのか。

BEFORE → AFTER

「何が本物か」を見極める信頼から、
「誰に判断を委ねるか」を決める信頼へ。

「信頼」という言葉で見ていた方向は合っていましたが、その射程は開催前に考えていたより広くなっていました。

03|「分散社会」より、権力がどこへ移るかが見えてきた

3つ目には「テクノアナキズム」という、かなり強い言葉を使っていました。

ブロックチェーンやAIなどの技術によって、政府や巨大プラットフォームなどに集まっていた力が分散し、新しい統治やネットワークの形が出てくるのではないか、という見立てでした。

実際のSXSW 2026を振り返ると、「分散型社会」そのものが会場全体を覆う大テーマになったとは言いにくいです。

その代わりに繰り返し見えたのが、権力の置き場所が変わるという問題でした。

たとえば、AIエージェントが検索や購買を代行するようになれば、これまで検索エンジンやウェブサイトが握っていた入口の力が変わります。

都市のデジタルツインが政策や都市計画に使われるようになれば、誰がデータを持ち、誰がシミュレーションの前提を決めるのかが重要になります。

クリエイター領域でも、AIによって作品やコンテンツが大量生成されるようになるほど、プラットフォーム、AI企業、権利者、クリエイターのあいだで価値と権限の配分が問い直されます。

BEFORE → AFTER

「中央から分散するのではないか」という問いから、
「AIによって権力はどこへ移るのか」という問いへ。

今振り返ると、「テクノアナキズム」という名前よりも、Power Shiftの方が、実際のSXSW 2026で見えていたものに近かったと思います。

開催前にテーマを置いておくと、「違ったところ」が見える

今回、半年前の説明会を改めて見返して面白かったのは、「予想通りだったか」を判定することではありませんでした。

むしろ、最初に考えていたことと、実際に現地で起きていたことの差が見えることです。

「AIネイティブ」を見ていたら、その先にAgentic AIがいた。

「信頼」を見ていたら、本物か偽物かだけではなく、判断や責任の問題まで広がっていた。

「分散」を見ていたら、実際には分散そのものより、権力の移動の方が重要になっていた。

FUTURIST’S NOTE

開催前に考えておく意味は、「当てる」ことではなく、
実際に起きた変化との差分に気づきやすくすること。

SXSWに参加するときにも、この方法は使えます。

プログラムを見てから「面白そうなもの」を探すだけではなく、行く前に「今年はこの変化を見たい」と、自分なりのテーマを一つか二つ置いてみる。

そして現地で、予想と違うものに出会ったら、その違いを残しておく。

それだけでも、何千ものセッションや展示があるSXSWの見え方はかなり変わります。

元になったオンライン説明会を見る

この記事の3テーマは、2025年9月17日に開催した「SXSW 2026 オンライン説明会シリーズ」第1回で紹介したものです。

動画には、当時発表されていたSXSW 2026の開催情報、ZIPAIRによる参加支援、日本からの参加サポートなども含まれています。これらは2025年9月時点の情報ですので、現在の参加方法についてはSXSW Japan公式サイトの最新情報をご確認ください。