FIELD GUIDE|GLOBAL TECH EVENTS
海外のイノベーションイベントやテックカンファレンスに行ってみたい。けれど、CES、SXSW、VivaTech、Web Summit、Slush、Ars Electronicaは何が違うのでしょうか。
どれも世界的に知られるイベントですが、実際には見えやすいものも、向いている目的もかなり違います。
新製品やハードウェアの実装を見るならCES。大企業とスタートアップの事業化を見るならVivaTech。スタートアップや投資家との高密度な接点を求めるならSlush。世界のテック産業を広く見るならWeb Summit。テクノロジーだけでなく、文化やクリエイティブ、社会の変化まで横断して見るならSXSW。そして、まだ事業になる前の問いや、人間と技術の関係そのものを考えたいならArs Electronica。
「どれが一番いいイベントか」ではなく、自社はいま何を見に行きたいのかから選ぶことが重要です。
この記事では、6つの代表的な海外イベントを、視察先としての特徴から比較します。
まずは6イベントの違いをざっくり比較
| イベント | 特に見えやすいもの | 視察の目的として考えるなら |
|---|---|---|
| CES | 製品、ハードウェア、実装、商用化 | 新しい技術がどこまで製品になったかを見る |
| VivaTech | 大企業×スタートアップ、事業化、欧州イノベーション | 技術をどう事業へつなげているかを見る |
| Slush | スタートアップ、VC、資金調達、Founder | 起業家と資本の最前線を見る |
| Web Summit | スタートアップ、企業、投資家、メディア | 世界のテック産業を広く俯瞰する |
| SXSW | テクノロジー、スタートアップ、研究、文化、クリエイティブ、社会変化 | 異なる領域の交差から次の変化を見る |
| Ars Electronica | アート、研究、技術、社会、倫理 | まだ市場になっていない問いや未来像を見る |
もちろん、それぞれのイベントには複数の側面があります。この表はイベントを固定的に分類するものではなく、「何を見に行くか」を考えるための見取り図です。
CES|新しい技術が「製品になるところ」を見る
CESは、米国ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジーイベントです。2027年は1月6〜9日に開催予定で、AI、ロボティクス、モビリティ、ヘルス、エネルギー、XR、スマートホームなど、幅広い領域の企業が集まります。CES自身も、世界のブランドやイノベーターが新製品を発表し、商談やパートナーシップを生み出す場として位置づけています。 CES公式を見る →
視察先として考えたとき、CESの強みは、技術がどこまで具体的な製品やサービスになっているかを一度に見られることです。
AIについて調べる場合でも、
「AIによって何ができるようになるのか」
「どんな製品として実装されたのか」
「どの企業が実際に市場へ出そうとしているのか」
「どんな業界へ組み込まれ始めたのか」
を見ることができます。
そのため、メーカー、研究開発、商品企画、事業開発などで、すでに形になりつつある技術や市場を広く確認したい場合には向いています。
一方で、すでに製品として見えているものが多いからこそ、「まだ市場になる前の社会変化」を探すこととは少し目的が違います。
VivaTech|新しい技術が「事業になるところ」を見る
VivaTechはパリで開催される、欧州最大級のスタートアップ&テックイベントです。公式には、スタートアップ、テック企業、大企業、投資家をつなぐ場として位置づけられており、2026年は6月17〜20日に開催されました。2025年実績では14,000社のスタートアップと3,600を超える投資家・ファンドが参加しています。 VivaTech公式を見る →
CESとの違いをあえて簡単に言えば、VivaTechでは、新しい技術そのものより、それを大企業やスタートアップがどう事業へつなげようとしているかが見えやすいです。
大企業の展示、スタートアップのピッチ、投資家との面談、事業提携、AIやロボティクスの実装事例などが同じ場所にあります。2026年のプログラムにも、AIエージェントの企業導入、スタートアップ投資、企業イノベーションなど、技術を「使う」「拡大する」段階のテーマが並びました。 VivaTech 2026 Programを見る →
特に、
「欧州企業はAIをどう事業に取り込んでいるのか」
「大企業はスタートアップとどう組んでいるのか」
「技術を実証実験で終わらせず、どうスケールさせているのか」
といった問いを持つ企業には相性のいいイベントです。
Slush|スタートアップと資本の「密度」を見る
Slushはフィンランド・ヘルシンキで開催される、スタートアップと投資家に特化したイベントです。2026年は11月18〜19日に開催され、公式サイトでは12,000人超の参加者と、25,000件超のミーティングを掲げています。Slush自身が「Founder-focused event」「largest venture capital gathering」と打ち出しているように、起業家と投資家の接点にかなり重点があります。 Slush公式を見る →
Slushの特徴は、見るものの幅より、人と人との接点の密度です。
スタートアップを探したい。
投資家と会いたい。
欧州のアーリーステージ企業が何を作っているのか知りたい。
資金調達やスタートアップ市場の温度感を知りたい。
こうした目的なら、かなり分かりやすいイベントです。
「世界で何が起きているのかを広く見る」というよりも、スタートアップという一つの生態系の中へ深く入るイメージに近いでしょう。
Web Summit|世界のテック産業を「広くつなげて見る」
Web Summitはポルトガル・リスボンで開催される大規模なテックカンファレンスです。2026年は11月9〜12日に開催され、スタートアップ、投資家、大企業、メディアなど、さまざまなプレイヤーが参加します。 Web Summit公式を見る →
Slushと比べると、特定のプレイヤーに絞るというより、世界のテック産業全体を大きく俯瞰する性格があります。
AI、Fintech、SaaS、モビリティ、Climate Techなど幅広いスタートアップを見ながら、世界各国の企業や投資家、メディアにも接点を持てる。
そのため、
「世界のスタートアップを幅広く見たい」
「複数地域の企業や投資家と接点を持ちたい」
「テック産業全体の現在地を一度に把握したい」
といった目的に向いています。
ただし、規模が大きい分、何を探すかを決めずに行くと情報量に埋もれやすいイベントでもあります。
SXSW|異なる業界が混ざったときに起きる変化を見る
SXSWは米国テキサス州オースティンで開催されるイベントです。2027年のSXSW Conferences & Festivalsは3月15〜21日。Innovation、Film & TV、Music、Comedyなどが同じ一週間に開催され、SXSW自身も「creative industries converge」と表現しています。 SXSW公式を見る →
SXSWの特徴は、単純に「テックイベント」として見ると分かりにくいところにあります。
AIについて知りたいからといって、AI企業だけを見る必要はありません。
- 教育でAIがどう扱われているか。
- 映画や音楽の作り方がどう変わっているか。
- 広告やマーケティングで何が自動化されているか。
- ロボティクスによってAIが物理世界へどう出ているか。
- 都市や生活者の行動がどう変わっているか。
こうした異なる領域を同時に見ることで、一つの産業だけを見ていると気づきにくい共通の変化を探すことができます。
SXSW JAPAN’S NOTE
SXSWを長く観測していると、その年の話題の製品以上に気になるのが、異なる会場や業界で同じ変化が繰り返し現れる瞬間です。
教育でも、広告でも、ソフトウェアでも「AIに判断を任せる」という話が出ているなら、それはAI業界だけのトレンドではなく、人間と仕事の関係そのものが変わり始めている兆しかもしれません。
SXSWは、そうした「別々だったものがつながる瞬間」を観測しやすい場所です。
新製品を効率よく大量に見ることが目的なら、CESの方が分かりやすい場合があります。
スタートアップと投資家の接点だけならSlushの方が密度が高いでしょう。
SXSWへ行く意味は、一つの業界の最先端を見ることより、複数の変化が交差した先に何が起きそうかを見ることにあります。
Ars Electronica|まだ「製品」になっていない問いを見る
Ars Electronica Festivalは、オーストリア・リンツで開催される、アート・テクノロジー・社会を横断するフェスティバルです。2026年は9月9〜13日に開催され、展示、パフォーマンス、コンサート、カンファレンス、ワークショップなどが街中で展開されました。テーマは「NEGOTIATING HUMANITY」。AIエージェントやヒューマノイドロボットまで登場する現在において、「人間であるとはどういうことか」が中心的な問いとして扱われました。 Ars Electronica公式を見る →
CESやVivaTechと大きく違うのは、必ずしも事業化を前提としていないことです。
アーティストや研究者が、新しい技術を使って、
「人間と機械の関係はどう変わるのか」
「AIが創造するとき、作者とは誰なのか」
「現実とは何か」
「技術によって身体や感覚はどう変わるのか」
といった問いを作品や実験として提示します。
そのため、今すぐ事業になる技術を探す場としては遠回りに感じるかもしれません。
しかし、まだ市場の名前も、事業カテゴリーも存在していない変化を早く感じたい場合には非常に特徴的な場所です。
新しい事業は、必ずしも「すでに市場があるところ」からだけ生まれるわけではありません。
まだ誰も答えを持っていない問いが、数年後には大きな産業テーマになることもあります。
Ars Electronicaは、そのさらに手前を見るイベントと考えると分かりやすいでしょう。
自分の目的なら、どのイベントへ行く?
ここまでの違いを、視察目的から逆引きすると整理しやすくなります。
CHOOSE BY PURPOSE
新しい製品や技術の実装を大量に見たい
→ CES
大企業とスタートアップがどう技術を事業化しているか見たい
→ VivaTech
スタートアップや投資家との接点を集中的につくりたい
→ Slush
世界のテック産業を幅広く俯瞰したい
→ Web Summit
異なる業界の交差から、次の社会変化を探りたい
→ SXSW
まだ事業になる前の問いや、人間と技術の関係を考えたい
→ Ars Electronica
ただし、これはどれか一つだけが正しいという話ではありません。
同じ企業でも、製品開発の担当者と新規事業担当者では行くべき場所が違います。
同じ新規事業担当でも、「具体的な技術を探している」のか、「提携先を探している」のか、「次に来る市場そのものを探している」のかで変わります。
面白いのは「どこまで未来を見るか」が違うこと
6つのイベントを比べると、もう一つ違いが見えてきます。
HOW FAR INTO THE FUTURE?
CES
すでに製品として形になりつつある未来。
VivaTech
企業やスタートアップが事業へ変えようとしている未来。
Slush
まだ小さな会社と、それに資本を投じようとする人たち。
Web Summit
世界各地のテック産業が動いている方向。
SXSW
技術が文化や仕事、生活の中へ入ったときの変化。
Ars Electronica
まだ製品にも市場にもなっていない「問い」。
これは優劣ではありません。
自社が、未来のどの地点を見たいのかが違うのです。
完成した市場を確認したいのか。
伸び始めた市場を探したいのか。
まだ市場になっていない変化を探したいのか。
ここが決まると、海外視察先の選び方はかなり変わります。
「どこへ行くか」の前に、自社は何を探している?
イベントを比較していると、
「結局、どれに行けばいいですか?」
という問いになります。
けれど、実際にはイベントを選ぶ前に考えたいことがあります。
自社はいま、何を探しているのでしょうか。
具体的な技術候補でしょうか。
新しい事業パートナーでしょうか。
投資先でしょうか。
顧客の新しい行動でしょうか。
数年後に生まれそうな市場でしょうか。
あるいは、そもそも次にどんなテーマを探索すべきなのかがまだ決まっていないでしょうか。
ここが曖昧なままだと、有名なイベントをいくつ回っても、
「面白かった」
「刺激になった」
「最新技術をたくさん見た」
で終わってしまいます。
海外視察で重要なのは、イベントの知名度だけではなく、自社が何を探しに行くかと、その場所で見えるものが合っていることです。
視察先が決まったら、次は「何を見るか」
イベントを選んだ後にも、もう一つ大きな問いがあります。
現地で何を見るのか。
最新製品だけを見るのか。
人の新しい行動を見るのか。
まだ解決されていない不便を見るのか。
複数の業界で同じ変化が起きていないかを見るのか。
海外視察で「変化の兆し」を見つける観察ポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
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そもそも「何を探すべきか」が決まっていない方へ
本当に難しいのは、CESとSXSWのどちらへ行くかを決めることではありません。
自社にとって、次に見るべき変化は何なのかを決めることです。
同じイベントへ参加しても、自動車会社と金融機関、エンターテインメント企業では、見るべきものは異なります。
さらに、自社の既存事業の延長線だけから未来を探していると、本当に重要な変化を見落としてしまうこともあります。
VISIONGRAPH × MUSUBIでは、未来の変化を観測し、その中から自社に関係するテーマを見つけ、新規事業の問いや仮説へつなげていくプロジェクトを行っています。
「海外視察へ行きたいが、どこを見るべきか決められない」
「そもそも次の事業テーマをどこから探せばよいのか分からない」
という段階であれば、イベントを決める前から考えることもできます。
NEXT STEP
まだ「何を探すべきか」が決まっていない方へ
VISIONGRAPH × MUSUBIでは、未来の変化から自社に関係するテーマを探し、新規事業の問いや仮説へつなげていく支援を行っています。
イベントありきではなく、「自社は次に何を見るべきなのか」という段階から考えることができます。
参考・公式情報
- CES — About CES
- VivaTech — About
- VivaTech — 2026 Program
- Slush 2026
- Web Summit
- SXSW — South By Southwest 2027 Dates Are Here
- Ars Electronica 2026 — NEGOTIATING HUMANITY
文:SXSW Japan
イベントの日程・参加規模・プログラム情報は各主催者の公式情報をもとに構成しています。



