FIRST-TIMER GUIDE|INTERNATIONAL CONFERENCE
初めて海外カンファレンスや展示会へ参加するとき、何を準備すればいいのでしょうか。
航空券やホテルを予約し、イベントのチケットを買えば参加すること自体はできます。
でも、実際に現地へ行ってみると、
「セッションが多すぎて選べない」
「誰に話しかければいいか分からない」
「英語に気を取られて内容が入ってこない」
「帰国してから写真と名刺だけが残った」
ということがよくあります。
海外カンファレンスを有意義にするために必要なのは、予定をぎっしり埋めることではありません。
BEFORE / DURING / AFTER
出発前に何を探すかを決めること。
現地では予定外の変化にも目を向けること。
そして帰国後に、見たものを次の行動へつなげること。
この記事では、初めて海外カンファレンスへ行く人に向けて、出発前・現地・帰国後の3段階で準備しておきたいことを整理します。
- 海外カンファレンスは「全部見る」ことを諦めるところから始まる
- 出発前1|まず「何を探しに行くか」を1〜3個決める
- 出発前2|公式プログラムを「全部読む」のではなく、地図をつくる
- 出発前3|自己紹介は30秒で話せるようにする
- 出発前4|会いたい人がいるなら、現地で偶然会えると思わない
- 現地1|セッションだけを見ない
- 現地2|「有名なセッション」だけを選ばない
- 現地3|「違和感」をメモする
- 現地4|一つのテーマを、別の業界でも探してみる
- 現地5|名刺の枚数より「もう一度話したい人」を残す
- 帰国後1|まず写真を整理する前に「何が変わったか」を書く
- 帰国後2|社内報告を「行った場所一覧」にしない
- 帰国後3|フォローアップは早めにする
- 帰国後4|「次に確認すること」を一つ決める
- 初参加だからこそ、全部分かろうとしなくていい
- まだ「どのイベントへ行くか」を決めていない場合
- 現地で「何を見るか」をもっと考えたい場合
- SXSWへの初参加を、準備から相談したい方へ
- 企業として、視察全体を設計したい場合
海外カンファレンスは「全部見る」ことを諦めるところから始まる
大規模な海外イベントでは、複数のセッション、展示、ミーティング、サイドイベントが同時に進みます。
特にSXSWのように街全体を使うイベントでは、会場間の移動にも時間がかかります。
そのため、最初から
できるだけ多く見る
ことを目標にすると、かえって何も残らなくなります。
重要なのは、
今回は何を知りたいのか
をある程度決めておくことです。
たとえば、
- AIエージェントが実際の業務でどう使われ始めているか
- 新しい顧客行動が生まれている領域はどこか
- 海外のスタートアップが何に投資しているか
- 自社業界の前提が変わりそうな兆しはあるか
などです。
テーマは一つに絞る必要はありません。
ただし、「最新トレンドを幅広く見たい」だけでは、現地で目の前に現れる情報量に負けやすくなります。
出発前1|まず「何を探しに行くか」を1〜3個決める
準備の最初に、参加したいセッションを100件保存する必要はありません。
それより先に、
自分は何を確かめに行くのか
を1〜3個決めてみます。
たとえば、
FROM BROAD TO SPECIFIC
AIが仕事を代替するか知りたい
↓
AIが「人を助けるツール」から「人の代わりに判断する存在」へ変わっている兆しがあるか
くらいまで問いを具体化できると、現地で見るものが変わります。
セッションタイトルだけでなく、展示、スタートアップ、広告、街中のサービスまで、同じ問いで見ることができるからです。
ただし、この問いを完成させすぎる必要もありません。
海外へ行く意味は、自分が考えていなかったものに出会うことにもあります。
出発前の問いは、答えを限定するものではなく、観察の起点として持っておく程度で十分です。
出発前2|公式プログラムを「全部読む」のではなく、地図をつくる
大規模イベントでは、プログラムだけで数百から数千件に及ぶことがあります。
一件ずつ精査するより、まず全体を大きく分類します。
たとえば、
- AI・テクノロジー
- スタートアップ
- デザイン
- 教育
- エンターテインメント
- 社会・都市
- ヘルスケア
など、自分の関心に近い領域を大まかに把握します。
その上で、
必ず行きたいもの
時間が合えば行きたいもの
現地で判断するもの
に分けます。
ポイントは、予定を100%埋めないことです。
海外カンファレンスでは、現地で知ったイベントや、その場で出会った人から勧められたセッションの方が面白いこともあります。
あえて余白を残しておく方が、予想外の発見が入りやすくなります。
出発前3|自己紹介は30秒で話せるようにする
海外カンファレンスでは、突然会話が始まります。
- 受付の列。
- セッション開始前。
- ランチ。
- ネットワーキングイベント。
隣に座った人から、
What brings you here?
と聞かれることもあります。
そのとき、会社紹介を3分話す必要はありません。
最低限、
- 誰なのか
- 何をしているのか
- 今回何を探しているのか
が30秒程度で伝えられれば十分です。
30-SECOND INTRODUCTION
I work in new business development at a Japanese company.
I’m here to explore how AI is changing customer behavior and to meet people working on new services.
程度でも会話は始まります。
完璧な英語より、相手が次に質問しやすい自己紹介の方が役に立ちます。
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出発前4|会いたい人がいるなら、現地で偶然会えると思わない
特定の企業、スタートアップ、登壇者、投資家などと話したい場合は、事前に連絡できるか確認しておきます。
海外カンファレンスでは参加者が非常に多いため、
行けば誰かに会えるだろう
と思っていると、結局会えないことがあります。
イベント公式のネットワーキング機能、LinkedIn、メールなどを使い、
I’ll be attending ○○ next week.
Would you have 20 minutes for a quick coffee?
くらいの軽い連絡をしておく。
全員から返事が来る必要はありません。
一つか二つでも具体的な面談が決まっていると、現地での動き方がかなり変わります。
現地1|セッションだけを見ない
カンファレンスに来ると、プログラム表ばかり見てしまいます。
でも、現地で得られる情報はセッションだけではありません。
- 展示ブース。
- 街中の広告。
- スポンサー企業。
- 飲食店。
- 参加者同士の会話。
- どこに行列ができているか。
- どんなサービスを人々が自然に使っているか。
セッションで語られている未来より、すでに街の中で始まっている変化の方が重要な場合もあります。
特に海外視察では、
発表されていること
実際に人がしていること
の両方を見ることが重要です。
現地2|「有名なセッション」だけを選ばない
著名人の基調講演や人気セッションは、当然注目されます。
ただ、あとから最も印象に残るのが小規模なセッションだった、ということもあります。
特に、
- 小さな業界で起きている変化
- まだ一般化していない研究
- 現場で試されている実験
- ニッチなコミュニティの議論
には、数年後に大きくなる変化が含まれていることがあります。
予定を組むとき、
有名だから見る
なぜか少し気になる
というセッションを一つ混ぜておくのもおすすめです。
現地3|「違和感」をメモする
情報を記録するとき、多くの人は、
- 面白かったこと
- 重要だったこと
- 勉強になったこと
をメモします。
それに加えて、
よく分からなかったこと
も残してみます。
WHAT FELT STRANGE?
「なぜこのテーマがこんなに何度も出てくるのだろう」
「日本では話題になっていないのに、ここでは当たり前のように話されている」
「このサービス、不便そうなのにみんな使っている」
「なぜこの業界とAIが結びついているのだろう」
というものです。
その場では意味が分からなくても、あとから別の現象とつながることがあります。
海外へ行ったからこそ感じる、日本で持っていた常識との違いは、かなり重要な情報です。
現地4|一つのテーマを、別の業界でも探してみる
もしAIをテーマに参加しているなら、AIセッションだけを見る必要はありません。
- 教育ではAIをどう扱っているのか。
- 音楽ではどうなのか。
- 映画ではどうなのか。
- 医療ではどうなのか。
異なる業界を見ると、一つの技術が社会へ入ったあとに何が起きるのかが見えやすくなります。
これは複数領域が集まるSXSWのようなイベントで特に有効です。
一つの業界だけで起きていることなのか。
それとも、いくつもの場所で同じ変化が起き始めているのか。
この違いを見ることで、単なる業界ニュースと、大きな社会変化を分けて考えやすくなります。
SXSW JAPAN’S NOTE
予定を守ることより、予定を変えられること
長くSXSWに参加していると、出発前につくった完璧なスケジュール通りに動くことが、必ずしも一番良い参加方法ではないと感じます。
偶然会った人に、「このあと面白いセッションがあるよ」と言われる。街を歩いていて、知らなかった展示を見つける。予定していたセッションより、直前に知った小さなイベントへ行ってみる。
こうした寄り道から、その年を象徴するものに出会うことがあります。
準備は重要です。
でも、準備の目的は予定を守ることではなく、現地で何を捨て、何を選ぶか判断できる状態をつくることでもあります。
現地5|名刺の枚数より「もう一度話したい人」を残す
ネットワーキングでは、多くの人と会うこと自体が目的になりやすいものです。
しかし、50人と名刺交換して誰とも連絡を取らないより、
この人とは帰国後も話したい
と思える人が数人いた方が、結果的には価値があります。
会話のあとに、
- 何をしている人だったか
- 何について話したか
- 次に何を連絡するか
を短く記録しておくと、帰国後のフォローが格段に楽になります。
「いい出会いでした」で終わらせないための、小さな準備です。
帰国後1|まず写真を整理する前に「何が変わったか」を書く
帰国すると、撮った写真、名刺、資料、メモの整理から始めたくなります。
その前に、一度何も見ずに、
今回の視察で、自分の考えが変わったことは何か
を書いてみます。
たとえば、
「AIについての見方が変わった」
↓
AIは業務を効率化する技術だと思っていたが、人が操作すること自体を減らす方向へ議論が進んでいた
というように。
帰国直後だからこそ残っている感覚があります。
資料を整理しているうちに、後から得た知識と混ざってしまう前に記録しておくと役立ちます。
帰国後2|社内報告を「行った場所一覧」にしない
社内共有では、
1日目:○○訪問
2日目:○○セッション
3日目:○○展示
と時系列で説明しがちです。
もちろん旅行記録としては分かりやすいのですが、参加していない人にとっては、
結局、何が重要だったのか
が分かりにくくなります。
たとえば、
- 現地で繰り返し見えた変化
- 視察前と見方が変わったこと
- 自社にも影響しそうなこと
- 今後さらに調べたいこと
という順番で整理した方が、社内の議論につながりやすくなります。
帰国後3|フォローアップは早めにする
現地で話した相手への連絡は、できるだけ記憶が新しいうちに行います。
長いメールは必要ありません。
FOLLOW-UP EXAMPLE
Great meeting you at ○○.
I really enjoyed our conversation about △△.
Could we set up a short call next month?
と、その場で話したことを一つ入れるだけでも、相手は思い出しやすくなります。
そして、
Let’s keep in touch.
だけで終わらず、もし理由があるなら、次の具体的な接点をつくります。
帰国後4|「次に確認すること」を一つ決める
海外視察の成果として、帰国直後に新規事業案が完成している必要はありません。
むしろ、
今回見つけた変化について、次に何を確かめるのか
が決まっている方が重要です。
たとえば、
- 日本でも同じ行動が始まっているか調べる
- 顧客にヒアリングする
- 関連スタートアップともう一度話す
- 社内の別部署へ意見を聞く
- 小さな実験を行う
などです。視察を「一度の海外出張」で終わらせず、その後の探索へつなげます。
初参加だからこそ、全部分かろうとしなくていい
海外カンファレンスへ初めて参加すると、
「もっと事前に勉強しておけばよかった」
「英語がもっとできればよかった」
「他の人はもっと効率的に回っている」
と感じることがあります。
でも、初参加でイベント全体を理解することはほとんど不可能です。
特に大規模イベントでは、参加者それぞれがまったく違う体験をしています。
全部を見ることではなく、自分なりの問いを持って入り、現地でそれを更新すること。
一つでも、「これは帰国後も考えたい」と思えるものが見つかれば、次の行動につながります。
まだ「どのイベントへ行くか」を決めていない場合
海外イベントは、どこへ行っても同じではありません。
新製品を見るならCES。スタートアップや資本を見るならSlush。技術の事業化を見るならVivaTech。異なる業界の交差から変化を探すならSXSW。まだ市場になる前の問いを見るならArs Electronica。
それぞれ見えるものが異なります。
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CES・SXSW・VivaTech・Web Summit・Slush・Ars Electronicaを、視察目的から比較しています。
現地で「何を見るか」をもっと考えたい場合
イベントが決まったら、次に重要なのは観察の仕方です。
成功事例だけを見るのではなく、
- 人の行動。
- まだ残っている不便。
- 別々の業界で繰り返す変化。
- これまでの「当たり前」が崩れ始めている場所。
そうした視点についてはこちらの記事で整理しています。
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SXSWへの初参加を、準備から相談したい方へ
SXSWは、一般的な展示会やカンファレンスとは少し参加方法が異なります。
セッションだけでなく、Film & TV、Music、展示、各企業や国・地域によるイベント、街中で行われるさまざまなプログラムが同時に動くため、初めて参加すると「どこから手をつければいいのか分からない」と感じることもあります。
SXSW Japanでは、日本からSXSWへ参加する方に向けて、参加方法やバッジ、現地での過ごし方などの情報提供・サポートを行っています。
初めてのSXSW参加を検討している方は、まずこちらをご覧ください。
PLAN YOUR SXSW
SXSW Japan|参加・視察サポートについて
バッジ、参加方法、事前準備、日本から参加するためのサポートをまとめています。
企業として、視察全体を設計したい場合
単にSXSWへ参加するだけでなく、
- 自社のテーマに合わせて何を見るか整理したい
- 視察前から観測テーマを設計したい
- 現地で得た情報を社内へ持ち帰りたい
- 視察後のリサーチや事業検討までつなげたい
といった場合は、SXSW Japanを運営するVISIONGRAPHが企業向けの視察・リサーチ支援を行っています。
FOR BUSINESS
VISIONGRAPHの企業向けSXSW活用・視察サポート
参加前のテーマ設計から、現地観測、帰国後のリサーチ・事業検討まで、企業ごとの目的に合わせて設計します。
文:SXSW Japan
海外カンファレンスへの参加経験と、2012年からのSXSW現地観測をもとに構成しています。



